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失敗について考える
 昨年から今年にかけて、私がお手伝いしている企業の中で、失敗事例の共有
化を進め始めた企業がいくつかあります。中には毎年1回、全社員に「今年の
最大の失敗」というテーマでレポートを提出させ、優秀な?失敗事例について
は、表彰している企業もあります。

 最近では「失敗学」と言われるものも、注目されています。発生してしまっ
た失敗を前向きに捉え、未来に活かしていこうと言う考え方ですが、企業の中
でも少しずつ具体的な取り組みが増え始めているような感じがします。

 私の周りで失敗に注目している企業は、成果主義を導入しているという共通
点があります。成果主義という制度の下で、成功したことだけが評価され、何
事においても成功するように、裏を返せば、できるだけ失敗しないように仕事
が進めている…そのような傾向に危機感を持ち始め、失敗事例の共有化を図っ
ているようです。

 もしかしたら、失敗しているということは、「困難なこと」「新しいこと」
に積極的にチャレンジしている結果かもしません。失敗に関しては、様々な捉
え方がありますが、少なくとも若手の社員に関しては、失敗しないように仕事
をすることよりも、困難なこと、新しいことに積極的にチャレンジすることを
目指して欲しいという考えから、失敗に注目し始めています。また併せて、若
手社員を育てる立場にある方々にも、失敗しないことよりもチャレンジするこ
とを評価する・指導することを意識させることもねらいとしています。

 恐らく成果主義を導入した背景には、一生懸命頑張っている人が報われるよ
うにという考え方がベースになっていると思われます。しかし、前述の通り、
評価しやすい結果だけに注目が集まると、「困難なこと」「新しいこと」への
挑戦が少なくなったり、組織・個人双方共に活力が減退することもあるように
思われます。
 何を成果として考えるか、人材開発における永遠の課題でありますが、失敗
をどのように位置づけるかを見直す中で、新たなヒントがあるように思われま
す。読者の皆さんの周りではいかがでしょうか?


             (2006/05/29 人材開発メールニュース第385号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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