Back Number

必要性が高まる戦略的な採用
 人事担当者部門では、新卒採用に忙しい時期だと思われますが、今年の新卒
採用は、様変わりしたような感じを受けます。私が住んでいる福岡も、昨年ぐ
らいからかなり採用環境に変化があったような感じでしたが、今年は企業(採
用)側は早く動き出したにもかかわらず、満足できるレベルの学生が集まらな
いという声が増えています。
 学生も多少売り手市場になったことを感じてか、または次から次に流れてく
る情報を整理できていないためか、エントリーする会社が減少しているような
傾向もあるようです。(企業側・学生側双方に過剰反応しているような感じも
しますが…)

 また事業・経営という観点では、業績が回復・拡大基調にある中で、目の前
にビジネスチャンスがあるにも関わらず、人材がいないために、チャンスに手
を出せないと言う話が増えています。「あの時、採用しておけば…」“たら・
れば”を言っても仕方が無いわけですが、そのような話を聞く機会も急増して
います。

 大手を中心に採用数が増えているのは、事実です。中堅・中小企業が、昨年
と比較して採用の質・量両面で苦労しているのも事実だと思われます。しかし、
今の採用環境も以前から予測可能な要素もあったように思われます。採用に限
ったことではありませんが、今期だけで解決できない課題が存在するというこ
とであれば、中期的にどう修正し、解決していくかを考える必要があります。

 私がお手伝いしているある会社では、昨年まで2〜3名の新卒採用を継続し
ていましたが、今年は思い切って新卒採用をストップしています。その企業の
経営者は、新卒採用を止めて、どの程度経営に影響があるかを検証したい、数
年後に痛い思いをするかもしれないが、今一度採用する目的を確認したいと言
われています。
 極端な例かもしれませんが、目的を再考・確立することで、結果として将来
的な採用力が上がることが期待できるかもしれません。

 今後労働人口が減少することは周知の事実であり、今まで以上に短期的な採
用・要員戦略だけでなく、中・長期的な採用・要員戦略が必要になっていると
言えます。労働人口が減少する環境で、自社の事業戦略と照らし合わせて、戦
略的な採用・人材マネジメントの必要性が高まっています。
 人事(人材開発)部門においては、今の採用に一喜一憂するだけでなく、未
来に目を向けて、経営サイドの要望に応える採用の仕組み・あり方を提示する
ことが求められています。もっと言えば、人事サイドが、経営サイドに将来的
な情報を発信し、(人事が経営の要望に応えるのではなく)人事が経営を動か
していくようなことも必要ではないでしょうか?


             (2006/03/27 人材開発メールニュース第377号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


Go to Back Number Index
Go to Top Page