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就職指導の現場から−2006年春
 毎年3月中旬になると、例年10月から翌3月まで続く大学での就職指導が
手仕舞いになるのでホッとする季節でもある。特に、1月中旬からの2ヶ月間
は、模擬面接が延々と無制限一本勝負がごとく続くので、体力気力がなんとか
持ちこたえたことがちょっぴり嬉しく自らの健闘を自ら称えている。

 昨年当たりから学生の就職市場は上昇傾向にあり、一部には“売り手市場”
とも言われている。どんなに頑張ってもなかなか大手企業の門戸をこじ開ける
のに苦労した少し前とは違い、相手が口を開けて待っている昨今はちょっと頑
張ればそれなりの企業に入れる絶好のチャンスが学生に巡ってきているともい
える。金融関係は入れ食い状態に近い。

 それなのに…私の担当する大学では学生の取り組み姿勢は大きく異なる。あ
る大学ではせっかく就職課が合宿を設けても、2回分で1回分しか学生が集ま
らない。例年3人1グループで模擬面接を実施していたものを個人面接に切り
替えても時間が余る。別の大学では、通いの模擬面接で10時スタートにも関
わらず、予定人員の3割しか時間に集まっていないし、お昼頃堂々と会場に現
れる輩もいる。その学生が模擬面接で公務員志望と述べても、会場にむなしく
響くだけであった。結局、この大学の模擬面接講座は申し込み者の半分しか会
場に現れなかった。やる気すら感じられない。

 かと思うと、12月から3月まで毎月合宿を実施している大学では、毎回、
ほぼ定員一杯の参加人数、やる気満々の学生は毎月レギュラーのごとく参加し
てくる。数人の女子学生は延べ9日間出席しているほどだ。9日間出席すると、
これまた延べ12回模擬面接を受けられる勘定になり「模擬面接の達人?」に
近い。例年見ているとこの手の学生は100%、かなり高いレベルの志望企業
から内定をゲットしている。

 模擬面接はプロ野球のキャンプ、オープン戦と同じで、そこで得たことや課
題を少しでも克服していよいよ公式戦に突入する。模擬面接という温室から自
分をスムーズに外界とつなぎ合わせていくきっかけの一つに過ぎない。うまく
利用した者だけが自分の成果に結びつけていく。私は憎まれ役をやることで、
あえて彼ら彼女らの踏み台でいい。

 毎年、5月くらいから、模擬面接指導した学生から内定獲得のメールが、手
元に届く。商売とはいえ、仕事を超えた部分もある成果の表れでもある。申し
込んでも出席してこなかった者はいざ知らず、参加してきた学生たちの就職活
動での健闘を心から祈る3月でもある。


             (2006/03/20 人材開発メールニュース第376号掲載)


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