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倫理・モラルを高めるベース
 ここ数年「コンプライアンスや個人情報保護」という内容が人材開発におい
ても、重要なテーマとして取り上げられています。私がお手伝いしている企業
でも、コンプライアンスや個人情報保護を強化していくために従業員の「倫理・
モラル」を高めていきたいという話が度々出てきます。

 人材開発の場面において、倫理・モラルに関する取り組みを行うには、幾つ
かのポイントが挙げられます。まず最初に重要なのは、「倫理・モラル」に限
ったことではありませんが、目標を明確に掲げることが必要になります。ある
べき姿と現状のギャップ=問題を明確にすること、企業(職場)内で共有する
ことが重要になります。倫理・モラルといった可視化が困難な内容になればな
るほど、目標・問題を明確にしないままに進められることが多々あります。た
だ単に「倫理・モラルを高めよう!」と言っても、目標・問題が見えなければ、
何ら智恵・行動が生み出されないと言えます。少なくとも現状の分析、何が問
題となっているのか?については、行動レベルでの分析が必要になります。

 次に大事なポイントは、できるだけ全員で考えて、全員で進めていくことが
必要です。「倫理・モラル」と言った「意欲」を高める手段と、「知識・技能」
を高める手段は異なります。知識・技能は、ある程度マン・ツー・マン(誰か
が誰かに教える・啓発する)で指導育成することが可能ですが、意欲について
は、マン・ツー・マンでは限界があります。個々の意欲に大きな影響を与える
のは、職場の風土であり、所属する集団(組織)の規範であると言えます。
「みんなで決めて、みんなで守る」という思想が大事になります。

 「倫理・モラル」を高めるいくためには、組織のある一部が考え、実行しよ
うとしても、浸透できるものではありません。よくある話ですが、「倫理・モ
ラル」を向上させるために推進委員会?などを設置して、プロジェクト的に取
り組むケースも多いようですが、推進委員会だけが考えているようなところで
は、上手くいかないケースが多いのではないでしょうか?
 勿論、推進していくためにはトップのリーダーシップも必要ですが、目標・
問題を明確にしていくためには、少なくとも現場のリーダークラス全員で意見
を交わし、共通の認識を持つ必要があります。もっと言えば、どれだけ日頃か
ら従業員の意見(不平、不満、改善すべきだと思っていること、など)を吸い
上げる体制ができているかどうかが重要だと思われます。

 コンプライアンスや個人情報保護に関する取り組みのあり方が、経営に大き
な影響を与えることは言うまでもありません。IT化の進展とともに、コミュ
ニケーションの手段が多様化し便利になったと言われる一方で、職場内の会話
そのものが減っていることも少なくないようです。組織内で日頃どんな会話を
しているかによって、職場の風土・規範は、決まったり、変わったりするもの
であると思われます。「倫理・モラル」を考える第一歩として、日頃どんな会
話がやりとりされているかを分析してみることも必要ではないでしょうか?


             (2005/09/26 人材開発メールニュース第352号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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