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成功体験の呪縛
 人材開発の場面に限ったことではありませんが、例えば研修など、一度実施
して良かったものがあれば、引き続き同じものが実施される傾向があります。
一度上手く機能した方法を実施するのは悪いことではありませんが、節目節目
で振り返ることも必要だと言えます。人材開発を企画・推進する場面において
も「成功体験の呪縛」から逃れられずに、新しいことができない、対応が後手
に回わるという話も良く聞きます。

 私がお手伝いしている会社で、できるだけマニュアルを作らないと言う会社
があります。マニュアルを作成して、単にマニュアル通りに作業を進めるので
はなく、できるだけ状況に応じた形で個人が創意工夫を発揮したり、柔軟な対
応を実施するためにマニュアルを作らない、頼らないと言う方針で業務を進め
ている会社です。
 ただこの場合でも、大事なことは「個人の創意工夫を発揮する」「柔軟な対
応を実施する」ということで、マニュアルを作る・作らないと言うことは方法
論でしかありません。しかし、これまでマニュアルを極力避けてきたその会社
では、マニュアル=悪という図式?が社内に根強く残り、「個人の創意工夫を
発揮する」「柔軟な対応を実施する」と言う議論よりも、「マニュアルを作る・
作らない」と言う議論に時間が費やされることがあります。

 このような局面を打開するためには、ゼロベースで考える方法をお薦めしま
す。新しいものを考える際に、原則これまでやってきたものはすべて禁止・実
施できないと仮定して、アイデアを出していく方法です。もう一度目的やねら
いを振り返り、ゼロベースで考えてみる、やってみる方法です。実際にやって
みると様々なアイデアが出てきます。中には考えれば考えるほど、従来の方法
論が良いという結論に至るものもあります。(社内研修や教育制度などを企画
する場面でも、かなり有効な方法ではないでしょうか?)

 いつもいつもゼロベースで考える必要は無いと言えますが、目的と手段を振
り返ることは、どんな場面においても大事なことだと言えます。上手く機能し
ている方法であればあるほど、そこから離れたくないという気持ちが働きます。
しかし、絶えず環境が変化している中では、敢えて成功体験を捨てることを前
提に考えなければ、前に進めない場面もあるような気がします。
 皆さんの周りでは、毎年・毎回同じことをやっているものはありませんか?


             (2005/02/14 人材開発メールニュース第322号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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