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「間違い」の間違い?
 最近、コンピンテンシーという言葉を聞く機会がやや減ったような感じがし
ますが、それだけ根付いたと言う事でしょうか?コンピテンシーとは、仕事や
役割に関して効果的で優れた成果を発揮する個人(=高業績者)の行動特性の
ことを意味していますが、ここ数年、高業績者の行動特性を洗い出すようなプ
ロジェクトに追われていた方も多いのではないでしょうか?
 コンピテンシーを明確にする、高業績をもたらす要因を追求することも大事
なことですが、組織の活性化を考える際には、上手く行っていない事例にも目
を向けることも必要だと言えます(人材開発の現場では、逆コンピテンシ
ーなどと言う言い方をすることもあるようですが…)。

 ある会社での事例ですが、ミドルマネジメント(課長層)にヒアリング調査
を行った時の話です。「トップ(経営層、事業部長層)に対する注文」と言う
項目があったわけですが、業績の悪い部門では、「意見が通りにくい」という
意見が数多く出されました。実際そこの部門責任者の方は、かつて高い業績を
残し、周りからも一目置かれています。日頃はメンバーに対して、どんどん提
案やアイデアを出すように積極的に指示されています。
 しかし、自分に対しても厳しいせいか、部下が持ってくる提案を次から次に
ダメ出しすることが多く、やたら「それは間違ってる」という言葉を連発され
ているようです。これでは提案がどんどん少なくなり、新しいアイデアは生ま
れず、組織が徐々に萎縮していくのは言うまでもありません。

 話は変わりますが、今年は「次世代を担うビジネスリーダーの育成」という
話題が多かったような気がします。事業を継承・発展させて行くために、将来
に向けて「ビジネスリーダー」を育成したいという話をよく聞きました。しか
し、その一方で会社のトップの方が、部下の方に対して「君の考えは間違って
る」「君の進め方、やり方は間違ってる」と言われている場面も数多く見たよ
うな気がします。

 以前受けたHRD(株)さんの研修でもよく言われていることですが、組織
を活性化させるためには、「間違い」ではなく「違う」という認識が必要だと
言えます。
 社長・トップが「それは間違いだ」と発言した場合、恐らく社長・トップの
考え方と合致していない、という意味で使用していると思われます。社長・ト
ップの考え方を否定するわけではありませんが、そこを基準にしている限りは、
社長・トップのアイデアを超えるものが生まれてこないと言えます。
 また「間違いだ」と言われた瞬間に、メンバーは上(社長・トップ)を向い
て仕事を始めてしまいます。革新的なアイデアや行動を生み出すためには、前
(市場・顧客)を向く必要がありますが、その動きにブレーキを掛けているの
は、もしかしたら「間違いだ」と何気なく言っている一言かもしれません。

 本気で将来を担うビジネスリーダーを育成しよう、自分を超える人材を育成
しよう、と考えるのであれば、失敗を「間違い」で済ましてしまうのではなく
「違う」と受け止める、なぜ違うのかを受け止める“覚悟”が必要ではないで
しょうか。
 トップに限ったことではありませんが、育成や指導が上手く行っていない組
織の一つの共通点として、「間違ってる」という言葉が多いような感じを受け
ます。皆さんの周りではいかがですか?


             (2004/12/13 人材開発メールニュース第314号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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