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短期的な成果主義の危険性
 先週の人材開発NEWSでも紹介いたしましたが、日本経済新聞社の「社長100人
アンケート」の結果でも明らかのように、経営サイドではより成果重視し、制度の
見直し加速する傾向が強まっています。望ましい賃金制度として、「成果主義」、
「業績連動型」、「職務給型」への支持が高いのもその現れであると思われます。

▼参考:日本経済新聞社「社長100人アンケート」
 → http://www.nikkei.co.jp/report/shacho1.html

 私の周りでも成果主義型の制度の導入を図る企業が増えています。実際に成果主
義型、業績連動型の賃金体系を導入(または導入を検討)している企業の場合、そ
の多くは評価の期間が1年または半年で運用されていることが多いようです。ただ
し、あまりにも評価のスパンが期間が短いものはおかしな現象が起こっているケー
スもあります。

 例えば、営業マンに毎年前年対比5%の売上アップを目標(予算)に掲げ、その
達成度を持って評価すると言う場合、前年売上が同じだったAさん、Bさんがいた
と仮定します。

<Aさんの場合>
 Aさんは、目標の5%には届きませんが毎年3%ずつ売上アップを着実に遂げて
いる(3年連続で目標未達成に終わっている)
 実績:1000000円→1030000円→1060900円→1092727円

<Bさんの場合>
 Bさんは、初年度は5%ダウンしたが以後2年間は目標通り5%アップを達成し
ている。
 実績:1000000円→950000円→997500円→1043750円

 A、Bさんの評価はどうなっているでしょうか?経営の貢献度ということで考え
れば、おそらくAさんの方が貢献度が高いはずです。しかし場合によっては、3年
連続目標未達成に終わっているAさんの方が評価が低いケースもあるようです。
(読者の皆様の職場ではいかがですか?)

 成果主義を否定するわけはありませんが、1年スパンだけで成果を判断するよう
にしていると、色々な弊害が起きています。目先のことだけに追われる、長期的な
取り組みができない、確実性よりも一発を狙う傾向が強まる、全体(組織)よりも
個人を優先してしまうなど、従来型の日本的経営の利点さえも摘み取ってしまう場
合があり、その結果経営が安定しない、従業員のモチベーションが下がるなど悪循
環を起こしているケースも少なくないと言えます。
 成果主義、業績連動型の評価制度を導入する場合は、1年(半年)スパンに限ら
ず、1年(半年)を評価するものと中期(例えば3年など)を評価するものの2つ
の視点を導入するような取り組みが必要になると思われます。

 人材開発のご担当者(特に人事も兼務されている)の方々は、制度を導入する場
面で、相当な知恵と労力をかけられていると思いますが、今後はますます運用場面
において制度に埋もれている人材の早期発見、早期対応が必要になってくるのでは
ないでしょうか。


             (2003/03/10 人材開発メールニュース第227号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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