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個人と企業の信頼感
 少し前ですが、年末にある会社の若手社員3人と雑談をする中で、どんな場面で
会社から頼られているということを実感するか?─と言うことを聞いてみました。
 入社1年目のAさんは、「何か難しい話ですねー。でもボーナスもらったときは、
嬉しかったです。こういうのも会社からの信頼を感じますよね」。入社2年目の
Bさんは、「信頼されていることを感じることはあんまり無いですね、多少一人で
やらせてもらえる仕事が増えたことでしょうか」。入社4年目のCさんは、「初め
てプロジェクトに呼ばれた時ですね。プロジェクトに参加して他部署の方と話がで
きたのも良かったですね」と言ってました。
 3人とも社内で期待されている若手の方です。彼らとは年末に飲みながら話をし
ていたわけですが、恐らくAさんは冬のボーナスを初めてもらった直後と言うこと
もあり、お金もらう行為に喜びを感じていたように思われます。Bさんは、仕事も
だいぶなれ、自分でやれる仕事が増えたことに、Cさんは、プロジェクトへの参加、
他の部署との関わりを持つ中で新たな仕事や情報に接することに興味を感じている
ようでした。三者三様ですが、自分の存在意義・周りからの信頼を感じるポイント
がそれぞれ違う、一番年収が少ないAさんがお金の話、その話を聞きながら、Bさ
ん、Cさんが仕事の話をしていたことが面白かったですね。
 周りからの期待や信頼を何から感じるかと言うことは、人それぞれ違います。同
じ会社、同じ部署の3人、勿論3人それぞれの個性もあるかと思いますが、勤続年
数が異なる彼らの場合、キャリアの成熟度の違いが自分自身の存在意義や周囲から
の期待・信頼を感じるポイントにも影響されていると言えます。

 最近組織と個人の関係の話題で、「信頼」という言葉を聞くことが多くなりまし
た。逆に言えば、組織と個人の関係の中で「信頼」が不足することへの不安、「信
頼」に対する渇望が高まっているように思われます。

 自由な雰囲気で元気の良かった企業(組織)が、業績の伸び悩みと共に、個人の
裁量よりも組織としての強制を強める中で、徐々に活力を失って悪循環に陥ってい
くケースも数多くあります。自由=信頼とは言えませんが、やはり元気の良い組織
には、企業(組織)と個人の間で、暗黙の信頼感があります。また“暗黙”である
がために、企業(組織)側・個人側どちらに限らず、一度信頼感に対して懐疑的な
見方を始めると、一気に不信感が増幅するとも言えます。

 様々な企業でリストラや人員削減が進められていますが、上手く展開できる、で
きない場面の差は、「信頼」をどう担保するかと言うことにあるように思えます。
リストラや人員削減そのものを否定しているわけではありませんが、人員という数
以上に「信頼」と言う事業の推進力を失っている場合も多いようです。リストラや
人員削減を行う場面こそ、明確にビジョンを示すことやオープンな議論を増やすべ
きです。上手く行っていない企業では、逆に急激にコミュニケーションや情報が少
なくなっているように思えます。

 P・F・ドラッカーの著書『明日を支配する者』の中で「組織はもはや権力によ
っては成立しない。信頼によって成立する。そのためには、互いに理解していなけ
ればならない」という一説があります。これからの組織を作っていく上で多くの示
唆を含んでいると言えます。
 皆さん、また職場のメンバーの方々の「信頼」はどうですか?


             (2003/01/27 人材開発メールニュース第221号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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