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変化対応と人材開発ビジョン
 今年最初のワンポイントアドバイスです。
 本年もよろしくお願い申し上げます。

 一般的には経営環境は厳しいと言われていますが、以前に比べますと「うちの業
界は厳しい」という話を聞く事が多少減ったような気がします。特に経営に近いポ
ジションで仕事をされている方とお話をしているとそういう感じを受けます。
 これは、業界が厳しいということでなく、業界の中でも業績のいい会社と悪い会
社が存在し、また社内の中でも業績のいい部門もあれば悪い部門もあるように、要
はマーケットにどのように対応するか重要だという認識が広まっているからだと思
われます。

 今現在の経営のキーワードは、「他社と競争する」ではなくて「変化に対応する」
ということにあります。他社(横)を意識して競争を続ける中で共倒れになるケー
スも多いようですが、元気が良い企業は、マーケットを独自の観点で捕らえ、他社
(横)を意識するよりも自社で設定したマーケットに徹底的に対応していく、その
結果として独自性が受け入れられていると言えます。競争の中から出てくる差別化
ではなく、市場・環境の変化に目を向け、信念を持って独自の対応を行うことが、
市場・顧客からの支持を受けているように思われます。

 人材開発を取り巻く環境でも同じようなことが言えます。人材開発を他社もやっ
ているからというレベルで進めている企業は、残念ながらうまく機能していること
が少ないようです。以前からこのコラムでも書いていますが、人材開発を「どうや
るか」ではなく「何故やるか」が問われていると思われます。コラボレーション、
アライアンス(提携)やアウトソーシングなど、経営に必要な人的体制を準備する
方法は多様化しています。手段に溺れることなく、多様化する手段を効果的に組み
合わせ、効率化を図るためには、ますます自社では人材開発をどう考えるかという
根幹たるビジョンが必要になっています。

 人材開発を人事マター(問題)と考える企業と経営マター(問題)として考える
企業と二極分化している傾向が非常に強くなっています。私自身どちらがいいとか
悪いとか言うつもりはありません。それはあくまでも、いいとか悪いとかというこ
とではなく、経営トップが「どうありたいか」を選ぶ問題です。ビジョンを語るに
は、「良い−悪い」の判断軸ではなく、「したい(好き)−したくない(嫌い)」
の判断軸が必要です。人材開発に限ったことではありませんが、経営レベルや現場
レベルで感じられる閉塞感を打開するためには、もっと「したい(好き)−したく
ない(嫌い)」の判断軸で、オープンに議論される場や仕組みが必要ではないでし
ょうか。恐らくこれからの人材開発は、ビジョンを形成するためのオープンな議論
を行う場や仕組みをどのように構築していくかも大きなテーマになっていくと思わ
れます。

 実際めまぐるしく環境は変化していきますが、私も人材開発の可能性、拡がりを
信じて「信頼に基づいたオープンな議論ができる組織作り」に貢献して行きたいと
考えています。
 今年もよろしくお願いいたしします。


             (2003/01/13 人材開発メールニュース第219号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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