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サービスの良し悪しを決めるのは誰?
 研修の中でよく使われる技法ですが、「目を閉じて手で頭の上に丸を作ってくだ
さい」と指示すると、本当に色々な形ができあがります。手だけで丸を作る人もい
れば、両腕を使って大きな丸をつくる人もいます。目を開けて周りの人が作ったも
のを見た時の、リアクションもそれぞれです。周りを見て何か自分が間違ったと言
うような恥ずかしげな表情をする方もいれば、自分が正しいと言うような顔で周り
を見まわす方もいます。(※試しにやってみるとおもしろいかもしれません)

 この指示に正解があるわけではありません。このような作業のねらいの一つには、
多様な価値観があることを認識していただくためのものです。もう少し厳密に言え
ば、「多様な価値観がある、様々な答えがある」ということを理解して欲しいとい
う目的で、指示した作業であれば、どれが正解ということでなく、むしろ色んな形
ができあがったことが正解となります。
 ただし、これを違う目的で実施した場合、例えば予め指示した人が「手で丸」と
いう形を具体的にイメージした上で作業した場合は、指示した人が事前にイメージ
した形が正解になると言えます。
 さらに突き詰めて考えると、指示した人が自分の指示が正しかったと判断できる
基準は、指示された相手がどのような形を作るかと言うことにあります、相手の作
った形を見て、自分の指示が良かった、悪かったということが判断できます。

 回りくどい表現になりましたが、最近たまたま2つの似たような相談をいただき
ました。サポートセンターの運営についての相談ですが、サポートセンターを立ち
上げ2、3年経った現在お客様の反応が余り良くないと言う相談でした。
 当初はわからないままにも力を入れてやってきたこともあり、1年を経過した頃
にはかなり評判がよかった。その後もマニュアルの整備など運営ノウハウも蓄積し
ているが、どうも最近エンドユーザーであるお客様の反応が良くないと言う内容で
した。実際に話を聞いていますと、たしかにマニュアルなども整備され、非常にシ
ステマティックに実施されているという印象を受けました。その反面どちらのケー
スも自社がやっているサービスのレベルは高いと自信をもっているところが気にな
りました。

 提供しているサービスに自信を持って取り組むのは悪いことではありませんが、
サービスが良いか悪いかを決めるのは、あくまでもサービスを受ける側=お客様で
す。「こちらはマニュアルも整備しきちんとやっているのに…」という前提で相談
されていた部分が多少あったような気がします。評判がいい、評価されているサー
ビスにつきものの落とし穴ですが、「サービスがいい」と言われるとサービスを提
供することに一生懸命になってしまいます。おそらくサポートセンターを立ち上げ
た時は、お客様に対応することに一生懸命だったからこそ評判が良かったのではな
いでしょうか。

 マニュアルは無いよりはあった方がいいと思われます。よくあることですがツー
ルの問題ではなく、ツールを利用するマインドの問題が一番大きいと思われます。
「お客様のために考える」というプロセスを、マニュアルがあることがネックにな
っているようであれば、やはり使い方を再度検討する必要があると思われます。サ
ービス、コミュニケーションに共通することですが、自分で自分を判断するだけで
なく、相手の反応を見て自分の行動について評価する視点が必要だと思われます。


             (2002/11/11 人材開発メールニュース第211号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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