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戦略家より戦術家?
 最近、経営者や人材開発担当者と「いま経営に必要な人材のイメージ」という話
をすると数年前と比較して少し変わってきたと思うことがあります。それは、戦略
的な動きよりも戦術的な動きができる人材が欲しいと言う意見が増えてきたことで
す。以前はどの場面においても戦略が大事だ、戦略的な発想ができる人材が大事だ
と言われてましたが、戦略家はもういい、戦術家が欲しいと言う人もいます。

 本来の意味から考えると少し違うような気がしますが、ここで言われている戦略
は前工程(企画、計画)、戦術は後工程(実行)と分けて考えられているようで、
計画を考えるのもういい、具体的な動きが欲しいと言う意味が込められているよう
に思えます。どこかの政府が悪戦苦闘している不良債権処理問題を思い出してしま
いますが…。今年は、スポーツの世界でもストライキが話題になりました。これか
らどうする=ルールが大切なのはわかりますが、ファンがみたいのはルールミーテ
ィングではなく試合だと言えます。当然このようなことが続くとファンが離れて行
ってしまいます。

 同じようなことが経営の現場でも起こっているようです。先日、オフィス機器を
販売している会社の人事部門の方から、次のような話を聞きました。「リストラを
進め従業員は減少しているが、一方で正社員一人あたりの残業時間、労働時間は増
えている。労働時間は増えているが、よくよく調べてみるとお客様のところで実際
に商談している時間はむしろ減っている。商談以外の仕事が増えているようだ。現
在の環境では、確かに顧客の意思決定が慎重かつ遅くなる傾向になっている。プレ
ゼンの工夫などより細かな情報提供が必要になっている、そのための準備が必要な
ことも理解できる。ただそれを理由にして、商談の絶対時間が減っているのはどう
だろうか?」
 この会社は営業マン一人一人に携帯端末を持たせ、かなり以前からグループウェ
アの導入を図るなど、情報化投資については積極的に行っている企業です。よくよ
く話を聞いてみると、会議、営業の資料作り、営業のための情報収集などの商談以
外の時間が年々増えているようです。情報化を進める中で、比較的簡単に情報が入
手できるようになったが、むしろ大量に入ってくる情報の整理ができず、情報に埋
もれていく社員が増えていると危惧されていました。

 戦略と戦術については「選択と集中」という言葉も頻繁に使われています。その
重要性は言うまでもありませんが、何に「選択、集中」するかを決める(時間をか
ける)だけでなく、「選択、集中」したことを実行することが今現在、強く求めら
れていると言えます。皆さんの周りでは戦略家?が増えていませんか?


             (2002/10/28 人材開発メールニュース第209号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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