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組織図を使って考える?
 日頃、読者の方から少しは集合研修の具体的な事例(手法)などの話題も入れて
欲しいと言う声もいただきますので、今回はインハウス(企業内研修)で新入社員
から幹部クラスまでどの階層にも応用できる方法を一つご紹介したいと思います。

 非常にベーシックな方法ですが、会社の組織図を書かせるという方法があります。
入社5年前後の方にやると一番面白い?のですが、結構自社の組織図を書けない社
員が多いことがわかります。組織図だけでなく部門ごとの人数まで入れさせると、
正解は非常に少なくなります。
 当然のことですが、企業には、経営目標や事業目標があり、それを追求する体制
として組織が編成されています。企業の戦う形を示した「組織図」を社員の方々に
確認すると言う方法は、会社全体の中での自部門や自分の役割を見なおすきっかけ
になります。事業の方向性を確認した上で各人が今現在、特に力を入れてやるべき
ことは何か、なぜそこに力を入れるのかを考えるきっかけにもなります。
 これは余談ですが、入社5年前後でやると一番面白い(面白いという表現は失礼
かもしれませんが)と言うのは、5年目ぐらいの社員の方々の回答を見ていると、
日頃上司(管理者)の方からどのように指導されているか想像できます。この年代
の方の回答は、個人の仕事に対する取り組みも勿論ありますが、上司・先輩から日
頃どのように指導されているかによって回答の質が大きく変わってきます。

 もう少し突っ込んだ形にするには、現在の組織図だけでなく、もう一つ、二つ前
の組織図も思い出させて書かせる方法があります。最近では目まぐるしく組織変更
をする企業が増えています。半期に1度、2度という企業も珍しくありません。部
門ごとの人数も含め、以前の組織図と現在の組織図の変化した形や変化した理由を
考えさせると、企業・事業全体の方向性を再確認することができます。勿論、その
変化と個々人の担当業務の関係を考えさせることがもっとも重要になりますが…。
 当然のことながら、以前の組織図を書かせるとさらに回答の精度は悪くなります。
集合研修に限ったことではありませんが、組織変更に関する説明は何らかの形で行
われているはずですが、個々人レベルでどの程度浸透しているかを測るという意味
でも、一考の余地はあるかと思われます。

 さらにマネジャークラス以上を対象にする場合、もう少し厳しい?研修にするに
は、「来年の組織図を書いてください」と作業をやっていただくこともあります。
当然書くだけではなく、なぜそのような組織図にしたか理由も出していただくわけ
ですが、書ける人と書けない人の差がはっきりします。内容的にも違いがはっきり
しますが、書き上げるスピードにもかなりの差があります。中には完全に筆が止ま
ってしまう方もいます。当然これには正解がありません。ただ経営という視点で、
会社全体や自部門のことを日頃からどのように考えているか、明らかになります。

 人材開発の現場では、まだまだ教えることが中心になっているようですが、もっ
と主体的に考えさせることが必要だと思われます。特に最近若手の方を中心に、教
えられたことはきちんとこなすが、応用ができないという声を聞くことが増えてい
ます。「どのようにやるか」だけでなく、「なぜやるか」がインプットされていな
ければ、応用できない人材をたくさん発生させることにもつながります。ただ単に
業務のやり方を教えるだけでなく、全体像を理解させることで、「なぜやるか、な
ぜ必要か」を考えさせ、個々人の行動指針としてインプットすることも必要だと思
われます。
 組織図を利用した方法は、企業規模を問わずだれでも簡単にできる一つの方法で
す。集合研修と言う場面だけでなく、OJTや会議等様々な場面で活用できる方法
でもあります。皆さんの周りでも検討されてはいかがでしょうか?


             (2002/10/15 人材開発メールニュース第207号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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