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教育効果と管理数値
 「うちの会社(職場)では教育しているが人が育っていない」という話を聞くこ
とがありますが、「教える」ことと「育てる」ことは違う視点で、考える必要があ
ります。多くの職場で実施されていることですが、教えることは5W1Hを使えば、
比較的簡単に目標設定もできますし、管理もできます。
 しかし、一方育てるという視点で考えると、もう少し具体的に言えば「教えたこ
とができる」「教えたことを活用して何かの行動を実施する」さらには「教えたこ
とを活用して何かの成果を生み出す」ことについては、目標設定、管理することは
簡単には進まないと感じている方も多いのではないでしょうか。

 実際の現場では、教える機会が多い少ないということで、教育を実施している、
していないが語られているのがまだまだ多いように思われます。近年の社員教育に
関する逆風?や費用対効果が要求される背景には、社員教育の視点が「教える」こ
とを中心に動いていた(動いている)ことに起因しているように思われます。

 それでは、「育てる」ことを目標設定、管理するために何が必要なのでしょうか。
一般的に数値化しやすかったり、目標設定しやすいのは、前述の最初の「教える」
量的な面であったり、最終的な実績、成果です。しかし、成果と教えることだけで
何かを管理しようとすると無理があります。ここからは、仕事内容によって異なり
ますが、社内で共有しやすい行動レベルでの管理数値(呼び方は色々あるようです
が…)が必要になってきます。営業で考えると、提案件数、成約率、クレーム率、
リピート率、顧客内シャア、etc.、職務内容に応じた行動レベルでの管理数値をで
きるだけたくさん考え、設定した数値が現場で本当に役立つかどうか、仮設−検証
を繰り返すということが必要になるかと思われます。

 今では、行動レベルの管理数値は色々な所で紹介されて、比較的に簡単に入手で
きますが、現場でどういう管理値、目標値が存在するかをもう一度全部話し合い共
有するだけでもかなり違ったものになります。メンバー個々の捕らえ方も違います
し、事業が進む中で何度やっても新たな発見があるように思えます。逆に言えば、
普遍的な管理数値もあるかもしれませんが、事業が進む中で管理数値というのは変
わっていくべきものです。
 また、どの会社でも優秀と言われるリーダー・マネジャーの方は、部下(メンバ
ー)の行動を判断する材料として、こだわって管理している部分が必ずあります。
そういうものをできるだけ共有することが、いわゆるナレッジマネジメントで求め
られていることでもあります。

 当たり前のことですが、「行動する(実行する)ためにどう教育するか」を考え
ると、教育のテーマは、より現場に密着した内容になっていきます。例えば、「若
手営業マンの教育」というより「〇〇商品の提案件数を増やすための教育」の方が、
より具体的な教育方法が検討できます。当然そこで実施した教育の効果がどうだっ
たかということも振り返りやすくなります。現場でも教育担当部門でも同様のこと
が言えますが、漠然と教えることを設計するだけでなく、より具体的な行動を引き
出すために何を教育するかという考え方、教える側の行動ではなく、教えられた側
の行動(成果)がどうなったかという視点が益々重要になると思われます。
 そのためにも既に使われている管理数値だけでなく、もっと他の管理数値を探し
てはいかがでしょうか。


             (2002/09/30 人材開発メールニュース第205号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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