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専門性の高度化と「つなぐ」力
 人材開発の現場でも様々な業務システムの導入が非常に早いスピードで進んでい
ます。人材開発の場面に限らず経営の至る場面で、新たなシステムの導入が期待さ
れています。またシステムに期待する領域が拡大するなかで、何らかのシステムを
導入する場合、業務の担当者・専門家が考えるだけでなく、システム開発に詳しい
方からアドバイスを得られなければ、物事が進まないことも多くなっています。

 様々な場面でシステムの導入が進んでいるわけですが、中には「システムを変更
したので、手続きが変わった、今後はこうやってくれ。」という話もよく耳にしま
す。そういう場合、便利になったと思うのはどちらかと言うと少なく、多くの場合
は「わかりにくい」「どうしてそうするの」みたいな印象を受けることの方が多い
ようです。(勿論多くの場合は、時間とともに慣れることもあり忘れてしまいます
が…。)しかし、少し冷静に考えると、システムに併せて作業を変えるというのも
何となくおかしな気もします。勿論ある程度、人の作業を変えていくことも必要で
すが、「何のためのシステム開発?」「誰のためのシステム開発?」という素朴な
疑問を感じることも少なくありません。人がシステムを利用するのでなく、システ
ムに併せて人が動かなければならない症状が出るのも事実です。

 先日、開発したもののあまり上手く運用が進んでいない人材開発関連のシステム
開発に携わったシステム開発の専門家、人材開発の専門家、両者の反省ミーティン
グ?の話を聞く機会がありました。今回のシステム開発では、従来に比べると、双
方ともにかなり時間をかけて細かい打合せを一生懸命やった。しかし、打合せして
いた内容の大半は、作業(手順)分析が中心で、機能(目的)分析が不足していた。
「どうする」という話は意見を交換できたが、「なぜやる」と言う視点から開発し
ているものを再検証することができなかった。途中開発の方向性についてお互いに
疑問に思ったことがあったが、やはり走り出したものを見直すことは勇気が必要で、
結果として見直すことを躊躇したために、当初の目的から外れてしまったと反省の
弁を繰り広げていました。
 新しいシステムを開発する場合、システム開発、人材開発それぞれの専門家が作
業(手順)レベルだけでなく機能(目的)レベルで開発の方向性や意図をどれだけ
共有できるかによって、開発されるシステムのレベルが決まるように思われます。
また共有するためには、双方が興味関心を持って作業(手順)レベルだけでなく、
機能(目的)レベルで突っ込んだ形での意見交換ができる必要があると言えます。

 人材開発に限ったことではありませんが、専門性が高くなればなるほど、高度化
する専門性を「つなぐ」ことが要求されます。逆に言えば今現在、「つなぐ」とい
うことが至る場面で不足しているという現れであるとも言えます。以前は「部門の
壁」ということが組織に中で問題視されていましたが、最近は「専門性の壁」を感
じることが増えているような気がします。専門性が要求される時代の中で、人材開
発の一つの大きなテーマとして「つなぐ」人材の育成は今後益々クロ−ズアップさ
れると言えます。


             (2002/07/08 人材開発メールニュース第194号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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