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新入社員を迎えるにあたって
 現在の経営環境や雇用環境を反映してか、今年は例年に比べると新入社員研修の
話題を聞くことが少ないような気がします。逆にここ数年の新入社員は、厳しい就
職環境を乗り切って入社をしていることもあり、企業、仕事に対する高い意欲や期
待を持っている(多少マニュアル的なところもありますが…)方も多いような感じ
を受けます。
 入社前に意欲を持つ新入社員が増えている割には、企業側の受け入れ体制が一向
に盛り上がりを見せない状況で、多くの企業でミスマッチが起きているようです。

 昨年の年末に財団法人社会経済生産性本部が発表した「2001年度新入社員半年間
の意識変化調査」では下記のような調査結果が報告されています。

※[参考] 財団法人社会経済生産性本部 http://www.jpc-sed.or.jp/
 「第11回 2001年度新入社員 半年間の意識変化調査」

・春とは一転、会社へのロイヤルティは低下、プライベート優先、転職志向が復活
する。
・スペシャリスト願望は過去最高値を記録。しかし、能力主義・成果主義志向は後
退する。
・自分なりの仕事でかなえたい夢や問題意識を持って行動するものは減少。一方、
仕事のやりがいより給料など労働条件を重視の姿勢に転換。
・企業人としての倫理意識は春より悪化。ケースにより男女の判断の相違が顕著。

 この調査結果には、人材開発に携わる一人として、非常に大きな危機感を感じま
す。一生懸命に採用した人材が半年で大きなモラルダウンを起こしている現実は、
一企業の問題ではなく日本の産業全体としても大きな問題であると思えます。
 勿論、全ての企業でこのようなモラルダウンを起こしているわけではありません
が、入社前の期待と入社後の現実の狭間で、たくさんの元気が失われているのは大
変残念なことです。

 モラルダウンを起こしている原因を考えると、会社、組織の雰囲気も勿論ありま
すが、実際の目の当たりにする上司・先輩を見てがっかりするという話をよく聞き
ます。多くの職場で以前と比べると尊敬できる、目標にできる上司・先輩がいない
という話題をよく聞きます。新しく入ってきた者からみれば、数年後の自分の姿を
上司・先輩と重ねて見たときに大きな不安になっているようです。

 多くの企業でこれから新入社員を受け入れ、新入社員研修が実施されることにな
ると思います。ここ数年の傾向では、できる限り集合研修を抑え、現場での指導、
OJTに移行する割合が増えております。現場教育の割合を増やすのであれば、実
際に指導にあたるメンバーの選定や指導にあたるメンバーへのフォローなどできる
だけ、新人の意欲を向上させる仕組みづくりが必要であると言えます。ただ単に集
合研修を減らすだけで、あとは現場の責任で…、という考え方ではやはりうまくい
くとは言えません。

 新人の元気、やる気を組織・企業の戦力とするために現場で新人の指導にあたる
先輩・上司に今一度新人を迎える意味や新人を育成を担当させる期待を人材開発担
当部門から徹底させることも必要ではないでしょうか。


             (2002/03/11 人材開発メールニュース第178号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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