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人材開発の現場における二極分化
 今年も残りわずかとなりました。少し早いような気もしますが、今年一年を
振り返ってみると、人材開発の現場では二極分化がかなりのスピードで進んで
いったような感じがします。ここでいう二極分化とは、ひとつの流れは人材開
発部門が専門性の高いビジネスユニットして、別会社化されるなど、コストセ
ンターからプロフィットセンターへの転換が進んだと言うことであり、もうひ
とつの流れは、社内のリストラとともに、人材開発部門の見直しが進み、コア
業務以外は外注化される傾向が強まったことと言うことです。

 まず前者の人材開発(教育)部門が分社独立する流れは、勿論以前からあっ
たことですが、最近の傾向としましては、独立採算で事業化することが要求さ
れるため、専門性を強く打ち出す形での分社が多くなっているように思えます。
以前の分社独立は、人材開発(教育)部門全体が分社する形がほとんどでした
が、最近では、専門性(=特定の強み)に分けて、例えば情報教育、マネジメ
ント教育を別々に分社させる、またカウンセリング業務を行う部門だけを分社
独立させる、などの動きが増えてきております。分社独立した場合、親会社
(=親会社という表現が正しいかどうかは不明ですが)だけに頼らず、自立し
て自ら新しい顧客の開拓が必要になるため、分社の際にも、事業領域を絞り込
んだ形で行われるケースが増えている言えます。

 また後者の外注化の流れも急速に進んでいます。企業に人材開発をサービス
を提供する、いわゆる教育機関は、以前は極端な話、講師派遣を行う業務だけ
を依頼されるケースも多かったように思えます。しかし、最近では研修業務そ
のもの、特に研修の運営業務全般も含めて依頼されることも確実に増えていま
す。例えば、年間の研修企画は社内で決定するが、研修の実施運営については
専任のスタッフの配置も含め、企画を出して欲しい、また研修所の運営全般を
実施して欲しいなどの依頼を受けるケースが増えております。人材開発(教育)
を「何のためにやるか」「どのようにやるか」を決定するコア業務を担当する
社員だけを残し、あとは外部機関に任せるという考え方をする企業が増えてき
ていると言えます。
 また、人材開発の企画といわれる場面おいても、従来教育機関サイドでは、
顧客のニーズ、課題を併せて、自社の保有する商品(=解決策)の範囲でのサ
ービスの提供をするか、解決策を保有してない場合は、他に市場があるかどう
かなど、市場全体のニーズを検討した上で新商品(サービス)を提供していま
した。もう少し具体的に言えば、パッケージ化した商品を売るか、多少カスタ
マイズして売るか、他の企業でも売れそうな商品であれば新商品としてライン
アップに加えるか、という感じだったと言えます。しかし、最近、特に中堅・
中小企業では、ただ単に解決策の提案でなく、人材開発を進めていくうえでの
課題を明確にさせる部分についてもかかわって欲しいというニーズが増えてい
ます。「どうすべきか」というサービスではなく「何をすべきか、どこからす
べきか」というサービスが求められることが増えてきたように思えます。この
場合においても外部からアドバイスを行うというレベルではなく、社内に入っ
て、例えば契約社員的な立場で経営トップと一緒に課題の整理を行う人材が欲
しい、などの依頼も多くなっております。企画も含めた人材開発の本来的なア
ウトソーシング化が進みつつあるとも言えます。

 会社の規模やこれまでの人材開発部門の体制などにより様々ではありますが、
間違いなく人材開発部門を取り巻く環境は大きく変化しております。恐らく、
前述のような流れは今後ますます進んでいくかと思われます。ただし、いずれ
のケースにおいても人材開発に専門性、存在意義が求められていることは間違
いありません。
 人材開発の現場に携わる読者の皆さんの周りはいかかでしょうか。


             (2001/12/10 人材開発メールニュース第166号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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