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リーダー育成と就業観・職業観
 前号のメールマガジンで、「マネージャー」と「リーダー」の違いについて
書きました。その後、と言ってもこの一週間のことですが、読者の皆様からメー
ルなどで色々な角度からの違いの定義をいただき、改めて勉強になりました。
(ご意見ありがとうございます!)
 また、前号で多くの企業において「リーダー」育成が求められるようになり、
その流れに併せて人材開発の現場においても、人材開発の重点が管理者(マネー
ジャー)対象とした教育から、マネージャーになる前の教育、将来的なリーダー
候補者を対象とした教育へシフトする流れが加速しているということを紹介さ
せていただきました。極端に言えば、管理者になってからの教育よりも管理者
になる前の教育に重視されるようになっています。
 企業の人材開発担当者や私どもような人材開発サービスに携わるものからす
れば、管理者になる前の教育では遅い、もっと早い時期に(例えば入社前後と
いうタイミングに)、就業観や職業観に対する教育を強化しなければ、今現在
求められているようなリーダーの育成にはつながらないという声も上がってい
ます。

 企業側からすれば、リーダーを育成するためには、「リーダーとはこうある
べきだ」などの知識的な教育もありますが、リーダーとして実践の場、自分の
判断で仕事を進めたり、リーダーシップを発揮する場を与えることができるか
どうか重要なポイントになります。「組織・風土(会社の中での仕事の進め方、
手順、手続きなど)はそのままですよ、でもあなたにはリーダーになって欲し
い」では、恐らくリーダーは育たないでしょう。

 個人側からすれば、働くことや仕事に対する価値観を本来的な意味で自律す
ることが重要になってきます。悪い意味ではなく、「会社は何もしてくれない、
誰も何もしてくれない。自分で考え、自分で動かなければ、何もできない」と
覚悟すること、自己責任の意識を強く持つ事が重要になります。そのためには、
やはり前述の早い時期での就業観および職業観を自ら考え、構築する機会が必
要になると言えます。今の世の中では、就職するまでに、「どうやったら会社
に入れるか」という情報は氾濫していますが、「何のために働くのか」という
情報は残念ながら乏しいと言えます。また「どうやったら会社に入れるか」を
“教わる機会”は増えていますが、「何のために働くのか」を“自発的に学ぶ”
機会は皆無に等しいと言えます。
 就業観、職業観と言われるものは、誰かに教わるものでなく、自発的に学ぶ
ことがなければ、醸成されません。

 人材開発を、企業の経営戦略を推進するための人づくりという視点で考える
と、入社前後の就業観や職業観を自ら学ぶ場を提供することが、人材開発の範
疇(企業として投資すべきこと)に入るかどうかと言うことも議論される余地
が残されています。就業観や職業観の重要性は指摘されつつも、それを学ぶ場
を誰の責任で提供されるべきかは、空白なままです。
 入社前後の就業観や職業観の確立は、グローバルな視点、日本の産業全体の
将来を考えれば、間違いなく力を入れていかなければならない領域だと思われ
ます。私個人としましても、大変興味がある分野ですし、何らかの形で具体的
な「もの」、「形」を生み出したい領域です。読者の皆さんはどのように考え
ますか?


             (2001/10/29 人材開発メールニュース第160号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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