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マネージャーからリーダーへ
 人材開発の現場において「ミドルマネジメント」という言葉を聞く機会がか
なり減っているように思われます。代わりによく耳にするのが「リーダー」と
いう言葉です。これは、企業における人材開発のターゲットが「マネージャー」
から「リーダー」に変わっていることを示していると思われます。(勿論、企
業によって言葉の定義は、様々なので一概には言えませんが...)

 では、マネージャーとリーダーの違いは何でしょうか。
 マネージャーという言葉から連想するものを考えると、単純に管理者という
イメージがあります。定められた目標に向け、プロセスを管理するというイメー
ジでしょうか。一方、リーダーと言えば、メンバーを引っ張っていくことが連
想されます。定められた目標に向かってメンバーを導くと言うよりも、混沌と
した状況から進むべき道を指し示すというイメージでしょうか。マネージャー
は物事をキチンと進めるイメージで、リーダーは、困難な状況に立ち向かうと
言うイメージであるとも言えます。
 特に最近では、企業、個人レベル問わずに、言葉だけでなく実感として「先
行きが不透明である」と認識することが増えているように思えます。そのよう
な状況下では、前述のリーダー待望論が繰り広げられるのも、わかるような気
がします。

 もう少し、マネージャーとリーダーの違いを明確にするために、マネジメン
ト・サイクルの中で考えてみたいと思います。マネジメント・サイクルとは、
「計画」、「組織化・割当」、「指示」、「統制」、「調整」の5つの機能の
ことです。この5つの機能の中で、従来のいわゆるマネージャーには、「組織
化・割当」「統制」「調整」の3つの機能を中心としたマネジメントスタイル
が要求されていました。特に調整を中心としたマネジメントスタイルであり、
調整を続けることで、確実に目標に近づけるといったものです。成熟していな
い市場・環境においては、実行と調整を繰り返すことが最も成果に結びつく可
能性が高いために、調整型のマネジメントスタイルが望まれていたと言えます。
 一方、現在求められているリーダーは、計画・指示型のマネジメントスタイ
ルであると言えます。計画においては、目標ありきでは無く、目標そのものを
打ち出すことが要求されています。指示については、実行する場面において対
処的な指示だけでなく、先の流れを読んで、絶えず先手を打つような指示スタ
イルが要求されています。

 現在MBAの価値が見直されたり、またMBA以外でもビジネススクール形
式のトレーニングプログラムが次々と生み出されています。その背景には、リー
ダーに求められる素養、特にビジョンを明確に打ち出し、メンバーに理解と共
感を与え、物事を進めていく部分が従来のマネージャー(管理者)の弱点であ
ると考えられているからではないでしょうか。
 人材開発の現場においても、人材開発の重点が管理者(マネージャー)対象
とした教育から、マネージャーになる前の教育、将来的なリーダー候補者を対
象とした教育へシフトしつつあります。特に20代後半位からのリーダー候補
者への教育は今後ますますニーズが高まることが予測されますし、ただ単に教
育プログラムだけでなく、企業、組織として若手のリーダーを育む環境作りが、
今後の人材開発および企業経営を大きく左右すると言えるのではないでしょう
か。


             (2001/10/22 人材開発メールニュース第159号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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