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キャリアについて考える
 いつも人材開発メールニュースをご愛読いただきありがとうございます。
 「人材開発ネット★情報BOX」もサイトを開設して、4年目に突入するこ
とができました。このメールニュースも次号で150回目の発行を迎えること
になります。毎年この時期には、発行者であります私の近況を報告しておりま
すが、今回は最近感じることを中心にコラムをお届けしたいと思います。

<参考>
※「人材開発メールニュース第50号発刊にあたって」
  http://blog.livedoor.jp/hrd_net/archives/37251736.html
※「人材開発メールニュース第100号発刊にあたって」
  http://blog.livedoor.jp/hrd_net/archives/40574904.html

 最近20代後半の方から「転職相談みたいなこと」を依頼されることが増え
ています。相談に来るのは、ほとんどの方が大学を卒業して入社5年前後、現
在の会社で活躍されている方ばかりです。「転職相談みたい」という表現をし
たのは、彼らのほとんどは、転職を真剣に考えていると言うよりも、転職も選
択肢の一つとして、これからの自分について…このままこの会社にいるべきか、
いていいのか、どうしようか…悩んでいるためです。

 個人的な話で大変恐縮ですが、私も独立したのは29歳の時でした。その当
時を思い出すと、仕事も順調でしたし、会社に不満があったわけでもありませ
ん。おそらく私の年齢や実力以上に仕事も任せていただいておりましたし、む
しろ恵まれた環境で仕事をしていたのではないかと思います(当然渦中にいる
時は、それほど実感する余裕はありませんでしたが)。ただ、非常に漠然とし
た感じですが、このまま30歳を迎えることに何となく不安を感じていたこと
が、独立を考えるきっかけだったような気がします。

 いずれにしましても、転職をするしないということに限らず、20代の後半
には多くの人が、自分のキャリアについて考える時期を持っているのではない
かと思われます。個々人の自立性が求められる中で、自分自身のキャリアを計
画に考え、形成していくことが大事だと言われていますが、実際に計画的にキャ
リアを形成できる人材は極めて少数派ではないでしょうか。労働市場が流動化
し、転職をする方が多くなっているのも事実ですが、その場合でも計画的にキャ
リア形成できているのは少数派ではないかと思われます。
 自分自身のキャリアというのは、計画的に形成すると言うよりも、ある時に
自分がやってきたことを振り返って、気がついたらできているもののようなも
ので、意識的と言うよりも無意識のうちに形成されているようなものであると
思われます。

 キャリアを考える中で大事なのは、無意識に形成したキャリアを紐解くこと
です。無意識の中で作られたキャリアの中にも、必ず選択する場面があったは
ずで、そこで何らかの無意識の内の意志が働いているはずです。例えそれが自
分の意志ではなく、誰かに言われた通りに従ったとしても、従うことを選択し
たことには何らかの意味があるはずです。過去において無意識の内に選択して
きた行動を、自分自身の中で紐解くには、やはり自問自答する時間や環境が必
要になります。多くの人は、日常の生活の中では、自分自身と向き合う機会が
なく、そのためにある程度仕事を覚えた段階=20代後半で、先が急に見えな
くなったり、自分自身の居場所が分からなくなったり、不安を感じるのではな
いでしょうか。

 キャリアを考えるためには、考える時間や場所が不可欠です。またそこで出
されるアウトプット(=キャリアの方向性や計画)も大事ですが、まずは自分
と向き合って自分のことを考えるというプロセスの方がより大事であると言え
ます。自分自身のキャリアに不安を感じる、悩むということは、自分のキャリ
アを考えている証拠です。ただし、そこで考えることができなければ、再び悩
んだり考えたりすることはできないのかもしれません。

 企業サイドから考えれば、人材に自立性を求めるのであれば、個々人が自分
のキャリアを考える環境を提供することや支援することも必要になります。ま
た個人サイドから考えれば、自分のキャリアは、結局は自分の問題なので、自
らキャリアを考える環境を創り出すことも必要になると言えます。
 キャリアを考えるということは、将来の自分に期待することでもあります。
またそう言う人材を数多く輩出できる仕組みを持った組織づくりが期待されて
います。

 いつものように、思いつくままを書いていますが、私も、自らのキャリアを
発展させようとする個人と、個人のキャリア形成を支援する…仕事を含めた環
境を提供しようとする…組織の融合を目指し、ホームページ、メールニュース
を介して、情報発信していきたいと考えております。また今後も、「人材」お
よび「人材開発」に期待する皆様方と共に考える場として、ホームページ、メー
ルニュースを運営していきたいと考えておりますので、よろしくお願い申しあ
げます。

           ( 有限会社 ワイズプロジェクト 代表:吉次 潤 )


             (2001/08/06 人材開発メールニュース第149号掲載)


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