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問題創造型管理者に求められる世界観
 すでに言い古されている感じもしますが、日本の産業全体が欧米にキャッチ
アップすることを目的に、邁進していた時代は、成功事例がすでにたくさんあ
り、企業が成長していく上で、クリアしていかなければならない問題が所与の
ものであったと言えます。その時代においては、いかに解決していくかを考え
ることがテーマであり、そのために様々な管理手法が開発され、いわゆる「ノ
ウハウ」をいかに浸透させるかが、企業の成長する源であったと言えます。
 しかし、日本の産業全体が成長し、欧米諸国と肩を並べる状況になった段階
で、追いつくべき目標を見失い、問題そのものを自ら創造して、自ら新しい進
むべき道を模索しなければならなくなったのが、ここ10年の日本の産業の姿
であり、産業全体としての問題(進むべき道)の創造が、そのまま企業またマ
ネジメントレベルにも要求されている状況になっていると言えます。

 多くの企業で、過去の経験則はもはや通用しない、自ら問題を創造して自ら
道を切り拓く管理者(リーダー)の養成が必要だと言う声を聞きます。
 一方、実際のマネジメントの立場にある方は考え方はわかるが、結局何をや
ればいいかわからない、という思いを持っている方も多いような気がします。
 革新型管理者、課題設定型管理者、問題創造型管理者、呼び方は色々ありま
すが、自ら問題を創造しなければならないということが管理者(リーダー)に
求められる共通点であると言えます。では、問題を創造する管理者(リーダー)
に必要なのはどういうことでしょうか。

 問題を創造するレベルが優れてるかどうかは、問題の捉え方にあるような気
がします。
 ここで言う問題の捉え方とは、組織の問題として捉えるか、企業の問題とし
て捉えるか、業界の問題として捉えるか、産業の問題として捉えるか、日本の
問題として捉えるか、世界の問題として捉えるかという、捉える視点、枠組み
の大きさです。
 様々な企業で優秀と言われる管理者(リーダー)の方と会話すると、問題の
捉えるレベルが非常に大きいことが共通しているように思えます。勿論、表現
方法はかなり違い、口に出して熱く語る方、秘めたる思いのを持つ方など様々
ですが、やはり優秀なリーダーと言われる方は共通して構想力の大きさを感じ
ることが多いと言えます。

 恐らく組織や会社の枠を超え、世界−日本−産業−業界の問題とより大きな
枠組みで物事を考え、その環境の中で自分のいる企業、組織の問題を非常にシ
ンプルに掴んでいるという印象を受けます。そのような方々には、業務遂行し
ていく上での使命感やプロ意識が感じられます。

 実際の企業活動は、先行きが見えにくいということで、できるだけリスクヘッ
ジしたいという考え方が根底にあることが多いと言えます。問題をシンプルに
捉え、信念を持って貫いていく為にはやはり、組織、企業だけに囚われない大
きな世界観が必要だということではないでしょうか。問題創造を何のためにや
るか、禅問答のような気もしますが、より大きな枠組みで考えるトレーニング
や職場環境を提供することが優秀なリーダーを輩出する一つのポイントではな
いでしょうか。


             (2001/07/09 人材開発メールニュース第145号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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