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コミュニケーションと無知の知
 私自身が30代ということもあり、同年代の友人の中には、管理職として悪
戦苦闘を始める人も増えてきました。最近何人かの友人と久しぶりにあって話
をする機会があったのですが、20代の部下の方とジェネレーションギャップ
を感じる、また20代の部下の方と話す時に、会話はそのものがかみ合わない
など、部下に対してどうコミュニケーションをとっていいかわからないと言う
愚痴めいた話を聞くことがありました。

 ひとつの原因として考えられるのが、ある部分に関しては部下の方が情報を
知っていたり、精通しているケースが増えてきていることが考えられます。こ
れまで仕事に関する情報は主に社内で獲得するケースがほとんどでした。した
がって、上司−部下の関係の中で部下側からすれば仕事に関する情報源は職場
であり、上司であることが多かったように思われます。しかし、インターネッ
トを始めとして、情報入手経路が多様化する中で、仕事に関する情報源も欲し
い情報は個人レベルで簡単に入手できる状況に変わりつつあります。勿論、全
部の情報が個人レベルで入手できるというわけではありませんが、職場や上司
から得られる情報は、一個人が得られる全部の情報の中で考えると相対的に減
少しているように思われます。
 そういう状況の中で、上司と部下がただ単にお互いの持っている情報を出し
合う、ぶつけ合うだけであれば、すれ違いが生じ、結果として前述のようなジェ
ネレーションギャップを感じるとか、意思疎通ができてないという言葉に変わっ
て表面化していると考えられます。

 少し部下育成的な視点で考えますと、これからの管理者は、指導者でなく支
援者であるという考え方…何かを教えるのではなく、組織の目標達成のために
部下を支援するという考え方が必要です。そのために会話(コミュニケーショ
ン)上で大切なのは、知ってることを話す、伝えるのではなく、知らないこと
を共有することにあると言えます。
 管理者の立場から言えば、自分の持ってる情報を提供するのではなく、部下
(相手)が不足している情報を何かを知り、それを提供することが必要になり
ます。また部下の方が情報に関して詳しい場合は、自分(上司)が不足してい
る情報を相手(部下)に理解させ、自分に必要な情報を引き出すことも必要で
す。また上司、部下ともに不足している場合は、双方に必要な情報は何かを明
らかにすることも大切だと言えます。

 当たり前の話ですが、コミュニケーションは一方通行ではなく、双方向に展
開されるものです。情報を双方に流通させることは、共有する情報を増やすた
めで、そのためには知ってることを一方的に流すのではなく、知らないことを
共有し、知らないことを埋めていく作業だと言う考え方が今後益々必要になる
のではないかと思われます。
 「無知の知」−知らないことを知る、という言葉がありますが、「無知の知」
こそ、コミュニーケションを通してお互いの信頼関係を高める最善の方法では
ないでしょうか。


             (2001/06/11 人材開発メールニュース第141号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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