Back Number 人材の確保・育成と先輩社員の不在 現在至るところで、雇用の維持・拡大が声高に騒がれていますが、企業の人 事・採用の現場、特に業績が伸びている会社では、むしろ人材が不足している という声を聞く機会が増えています。会社の戦略を進めるコア人材については、 どの会社も絶えず不足感を抱いている結果であると思われます。 また採用できないばかりか、これだけ雇用が厳しいと言われる中でも若年層 の離職が増え、社員の定着化について真剣に考える企業も増えています。 人材の獲得・確保で悩む企業では、組織の中での人間関係の希薄感、また若 年層で、組織の中で孤独感を感じる人が多いと言うことをよく耳にします。 業績主義や成果主義の導入が進む中で、個人の業績、成果に関心が集まり、 組織的な動きや長期的な動きがとりづらくなっている。その結果、先輩社員か ら後輩社員へのかかわりが減ってきているとも言われております。少し前の年 功序列的な組織の中では、評価などに関係無く、自然発生的に先輩から後輩に 教える風土が存在していましたが、現在は育成そのものを評価項目に取り入れ なければ、主体的な取り組みが維持されないこともあるようです。 また、若年層の離職には、目指すべき先輩社員の不在ということも原因とし て考えられます。以前は、何年後には○○先輩のようになれる、またマネージャー になれば、あんな仕事ができるなるなど、身近に自分の将来のイメージを思い 描ける先輩社員の姿がありました。しかし、現在では後輩へのかかわりを嫌う 先輩社員、また自分のことで頭が一杯の上司の姿をまのあたりにして、自分の 具体的な将来像を描けない若手社員が多いことも事実です。 20代〜30代の社員の間で成果主義、業績主義への希望は根強く、今後も ますます制度的には導入が増えることが予測されます。ただし、成果主義や業 績主義の導入が、組織内での人間関係の希薄感を生み出し、結果として組織、 会社全体の成長を阻害する要因となるようであれば、必然的に見直しの動きも 活発になると言えます。 経営戦略に必要な人材を確保・育成する人材開発的な視点で考えると、計画 的に先輩社員(モデル社員)を作ることも必要になるかと思われます。全社的・ 長期的な組織作りを考える世話役的な人材を計画的につくるという形になるか と思われますが、当然教育セクションが、その役割を担うことを期待されます。 教育セクションが人材を育成するだけでなく、教育セクションにいる人材が、 組織作りを考える世話役的な機能を待つ、教育セクションはそのための実践の 場となることも期待されます。 いずれにせよ、今後社員を増やす、また減らすに場面において、最適人員の 確保は量の問題から質の問題に転換することは間違いありません。会社として 欲しい人材をいかに確保できるか?この視点から採用、育成、評価制度を構築 する必要があると言えます。 (2001/05/28 人材開発メールニュース第139号掲載) WISEPROJECT:吉次 潤 Go to Back Number Index Go to Top Page |