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能力開発の線引き
 今週のニュースとしてもとりあげましたが、先日労働政策審議会から第7次
職業能力開発基本計画が答申されました。この基本計画は、今後5ヵ年の職業
能力開発施策の方針を示したものです。読者の皆様にも、参考になる点が多い
かと思われますので、一部内容を抜粋した形で紹介させていただきます。

○労働移動が活性化する中で、雇用の安定を図るためには、労働者や企業が労
働市場に係る適切な情報を入手でき、労働者の職業能力を確認しつつ、その職
業生活設計に即して教育訓練を受け、キャリア形成を図ることができるように
することが必要。
○このためには、労働市場を有効に機能させる必要があり、そのためのインフ
ラストラクチャーとして、次の5つのシステムを構築していくことが不可欠で
ある。
○こうしたシステムの構築を通して、労働市場を機能させ、円滑な再就職の促
進や労働力需給のミスマッチ解消等雇用の安定を図る。

−5つのシステム−
 労働力需給調整機能の強化
 キャリア形成の促進のための支援システムの整備
 職業能力開発に関する情報収集・提供体制の充実強化
 職業能力を適正に評価するための基準、仕組みの整備
 能力開発に必要な多用な教育訓練機会の確保

◇参考資料 厚生労働省「職業能力開発基本計画(案)」の答申について』
 http://www.jil.go.jp/mm/siryo/20010425a.html 

 現在の雇用環境におけるミスマッチの解消を重点課題として捉え、今回の基
本計画では、課題解消のために労働者自らがキャリアを設計し、必要な訓練を
受けることができるよう基盤づくりを行うことを中心においています。また、
労働者が能力開発を行う上で、自身の職業能力を評価する基準や仕組み作りを
整備することが重点として挙げられています。
 雇用環境の変化に伴い、労働者の主体的なキャリア形成、能力開発が期待さ
れ、その実現のために今まで以上に、行政と民間(教育機関や職業紹介機関)
の連携強化が訴えられる内容になっているのではないかと思われます。

 これからの人材開発を考える上で、ますます行政、企業、教育機関、個人の
役割(責任)の分担が必要になるかと思われます。個人には、前述の通り主体
的なキャリア形成や能力開発が要求されるのは言うまでもありません。一方企
業には、特に人事教育担当部門には、社員のキャリア形成についてどこまで支
援するかと言う線引きが要求されます。
 個人と企業、組織がお互いに自立し、お互いが相互補完する関係を目指すと
言うことであれば、企業が行う教育訓練と個人が行う能力開発について明確な
線引きが必要になります。それぞれの役割(責任)分担を明確にすることで、
人材開発のあり方、進め方が大きく変わってきます。(勿論、線引きに一番影
響を与えるのは、トップの考え方ですが...)
 様々な企業で、人材開発の見直しが検討されていますが、まず最初にやるべ
きことは、経営方針、経営戦略と照らし合わせた上で、会社の教育訓練と個人
の能力開発の線引きを行い、全社員がそのラインを共有することではないでしょ
うか。


             (2001/05/14 人材開発メールニュース第137号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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