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人材育成の分類と動向
 今回は人材育成(教育)の分類と最近の状況について考えてみたいと思いま
す。教育を分類する考え方の一つとして、何を教育するのかで分ける視点があ
ります。代表的なものとして、以下の4つに分類することができます。知識の
教育、技能・職務教育、やる気・態度教育、創造の教育という4つです。

 まず最初の知識教育については、仕事を進めていく上で必要な知識、情報を
教えるということです。知識教育に偏重することは考え物ですが、全ての教育
の土台、基礎となることは間違いありません。従って、知識の質・量をどう高
めていくか、個人レベルでもそうですが、組織レベル、企業レベルでどう高め
ていくかということが重要なポイントになります。現在様々な企業で取り組ん
でいるナレッジマネジメントも、第一段階の目標としてはどれだけたくさんの
知識を集めることができるかがポイントです。(それをどう使うかがより重要
なことになりますが...)

 技能・職務教育は、知識をもとに仕事を進めていく上での方法を教えるとい
うことです。知識教育では「わかる」レベルを高めますが、技能・職務教育は
「できる」レベルを高めるということになります。特に最近では、この分野に
はスピードアップ、即戦力ということが重要なポイントになっています。あら
ゆる分野で環境変化が急速に進む中で、環境変化への対応を素早く行うかが求
められています。仕事のやり方、進め方などいわゆるノウハウをいかに早く、
正確に身につけるかがポイントです。

 やる気・態度教育は、身につけた知識、技能を発揮し、成果を生み出す環境
を整備するために行われます。どんなに「わかる」「できる」レベルを向上さ
せたとしても、やる気(モチベーション)がなければ、身についた知識、技能
は成果を生み出しません。また知識、技能をどのように発揮するかと態度につ
いても、最近の企業倫理の問題も含め、顧客や市場に対してどのように価値を
提供するかが問われています。モチベーションを高める、また企業の存在価値
を高める、教育を含めた制度(システム)をどう作るかがポイントになります。

 創造の教育とは、自立した人材を育成するということになります。戦略を創
造できる人材、課題を創造できる人材、問題解決を創造できる人材など、様々
な局面で、自ら取り組む人材を育成することだと言えます。特に最近の人材開
発においては、どの分野においても自立型人材の教育が重要であると言われ、
人材開発を担当する部門においては必ず重要なテーマの一つとなっているので
はないでしょうか。

 以上、4つに分けて見ましたが、現在最も話題の中心となるのは「創造の教
育」の分野であることは言うまでもありません。人材開発に関する様々なニュー
スソースを見ても、絶えず、色々な方法が検討されています。ただ、このよう
な風潮の中で気になるのは「創造の教育」以外の部分が軽視されすぎではない
かと言うことです。「創造の教育」は、応用力とも言えます。応用力の高さは、
基礎的な「知識、技能・職務、やる気・態度」の高さによって決まるとも言え
ます。基本的な部分に関しては、会社(人材開発部門)が行うというよりも、
従業員個々人の努力に委ねるという考え方もありますが、経営戦略を遂行する
ための人材を育成していくために、基礎的な教育を、会社(人材開発部門)と
して、「どこまで行うのか」「どこまで責任を持つのか」をもう一度考えるこ
とも大事なことだと言えます。


             (2001/03/26 人材開発メールニュース第131号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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