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情報格差は経営格差
 私は福岡に住んでおりますが、地方を拠点としてビジネスをする上で非常に
危機感を感じることが多くなりました。地方における情報格差が間違いなくビ
ジネスの格差を生み出しているということです。先日、九州経済調査協会から
「2001年版九州経済白書」が発表されました。白書では、九州の経済の状況を
下記のように報告しています。
…九州の現状は、「雇用なき景気回復」(ジョブレスリカバリー)と言われた
1900年代初期の米国と酷似している。九州では99年以降緩やかな景気回復が続
いているが、失業率は5%を超えて高水準にある。これは売上が伸びない中で
利益拡大を図る企業が正社員を中心に人員削減を進めていることに起因してい
る。さらに、九州の企業ではITを戦略的に取り組みも遅れ気味であり、IT
をコスト削減の道具にとどめず新たなビジネスモデルを構築する「産業のIT
化」を進めなければ、「負け組」になる恐れも強まる。

 東京に住んでいる方からすれば、何を今更と言った内容かもしれませんが、
福岡など地方都市の現状はまさしく白書に報告された通りだと言えます。個人
よりも企業の競争力と言う点でデジタルデバイドの存在が生まれつつあるよう
な気がします。
 このホームページをスタートしたのは、中央と地方の人材開発における情報
格差を少しでも解消したい、インターネットを利用して情報発信したい、とい
うことがきっかけでした。恐らくこのホームページがスタートした3年ぐらい
前は、インターネットを利用すれば、いつでも誰でも情報を入手することがで
き、地方の情報格差は解消されるという論調が支配的でした。しかし実際は、
地域間格差が無くなるどころか、東京への一極集中がさらに進んでいるように
思えます。
 私事で恐縮ですが、私もこのような形で情報発信し、発信する情報に興味関
心を示していただき、人材開発に関するご相談をいただくことが増えておりま
す。しかし、ご相談いただくのは、東京からのケースが多く、特に、昨年の後
半からは、新規で依頼される仕事のほとんどが東京の企業や教育機関の方々か
らという状態です。

 さらに地方企業の人材を取り巻く環境では、深刻な状況が起こりつつありま
す。福岡では現在、地場企業の人材、特に若手の技術者の方を中心に、地場企
業から東京本社または外資系企業の九州支店、福岡支店などと言った、福岡事
業所への転職が進んでいます。このような転職の流れは、別に新しい動きでは
ありませんが、量とスピードがこの半年ぐらいで非常にスピードが増したよう
に感じます。これは、数多くの企業の支店が集中し、支店経済と言われる福岡
に限ったことかもしれませんが、情報に限らず、仕事・人材が、東京へ集中し
ているように思われます。

 地方企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなっています。この難局を乗り
越える一つの方法としてリストラが必要なことは十分理解できますが、東京の
大企業と同じ様なリストラの進め方では、優秀な人材を流出するだけで、その
企業は勿論のこと地域経済自体の競争力が低下する恐れがあります。5年後の
地方経済がどのようになっているか、本当に心配でなりません。私自身も、情
報格差について明確な解決策を見出している訳ではありませんが、結局は経営
者という人材にかかるような気がします。政治と同様に地方企業でも、不透明
な時代に進むべき方向を指し示す、優秀なリーダーの出現を待つしかないので
しょうか?


             (2001/02/26 人材開発メールニュース第127号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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