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制度疲労する未達原因の究明
 最近の研修では、即効性を求めたり実務適用を図るために、研修プログラム
の中で、現場の問題を題材としてその解決策を探るやり方を導入しているケー
スが増えています。特に管理者研修では、自部門のSWOT分析など環境分析
を実施し、課題設定や活動計画を立案するというような方法が以前から行われ
ています。

 少し前に、ある企業の管理者研修をたまたま見学させていただきましたが、
その研修でも現場の課題の洗い出しと行動計画の作成を実施されていました。
横で見ていて気になったことですが、もう一つ真剣な雰囲気が伝ってこないと
いうか、受講者が作成している行動計画に作成者自身がコミットメントしてい
ない雰囲気がはっきりわかるような研修でした。私が見学していた企業に限ら
ず、このような話を聞く機会は増えているような気がします。

 現場の課題の洗い出しや行動計画に対し受講者コミットメントしていない原
因の一つとして、欠点(=上手くいっていないこと)の問題分析に傾斜しすぎ
ているという点が挙げられます。景気が低迷のする中で、多くの企業また現場
レベルでも目標を達成できていない状況が多いのではないでしょうか。そのよ
うな状態で、前述の研修を実施すると、どうしても話題の中心は、目標未達の
原因究明に集まる傾向にあります。恐らく企業レベルでも現場レベルでも目標
未達の原因究明は既に実施したり、その度に改善策や新たな動きを実施してい
るにもかかわらず、目標に届いていないと言うのが、現状ではないでしょうか。

 未達原因の究明による課題設定、対応策立案という方法が、制度疲労を起こ
していると言えます。未達原因の究明による課題設定、対応策立案という方法
は、例えば業績が好調で急に業績が悪くなったり、業績が悪くなる初期段階で
は有効ですが、現在のような長期にわたり業績が横這い、低迷という状態に陥っ
ている場合には、有効な方法でありません。言い換えますと、欠点を追求して
も、構造的な問題の解決はできないと言うことです。

 営業などで考えると分かりやすいのですが、目標未達の企業・現場であれば
あるほど、売れない理由を追求しすぎているのではないかと思われます。今必
要なのは、売れない理由を探ることよりも、目標には届いていないが自社の商
品・サービスを購入している既存顧客がいるわけですから、既存顧客が買って
いただいている理由を追求することではないでしょうか。既存顧客が自社の商
品・サービスを利用することには、必ず理由(=自社そのもの、また自社商品・
サービスへの評価や期待)があるはずです。自社を利用する理由を考えるプロ
セスにこそ、これからやるべきことの多くのヒントがあるのではないでしょう
か。全体的に悪い状況であればなおさら、部分的に上手くいっていること、成
功要因の明確にすることの方が大事です。
 顧客が自社を利用する理由こそ、自社の存在価値であり、その会社独自の成
長が約束される要因であると言えます。

 何でもそうですが、悪いことを反省することより、良いことを考える、今後
の楽しみを考えることが楽しいのは当たり前のことです。研修に限ったことで
はありませんが、複雑な現象を解明することよりも、もっと単純な考え方が必
要ではないでしょうか。


             (2001/01/29 人材開発メールニュース第123号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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