Back Number

21世紀の人材開発考
 いよいよこの「ワンポイント・アドバイス」も今世紀最後となりました。
 さて、今回は来るべき新世紀に向けて、これからの人材開発の方向性を少し
考えていきたいと思います。
 今週のニュースにも案内しておりますが、先日、中央職業能力開発審議会か
ら、「今後の職業能力開発施策の在り方」が建議されました。

◇今後の職業能力開発施策の在り方について(建議)」について
 http://www.jil.go.jp/kisya/noryoku/20001207_02_n/20001207_02_n.html

 是非読者の方々にもご一読いただきたいのですが、業績思考、成果思考が強
まる中で、企業による長期的視点からの人材育成の取組が弱まっていると指摘
されています。人材に関しても即戦力志向が高まり、能力開発の対象が社員一
律から若年層や管理職に絞り込まれたり、全体として企業主導の教育訓練が後
退し、これまでの人材育成を支えてきた計画的OJT、Off−JT実施率に
減少傾向がみられ、社会全体としての人材投資の減少につながりかねないと報
告されています。
 一方、労働者側には、高齢化社会への移行、外部労働市場の成長なども踏ま
え、企業の職務の再編に適応し、生きがい・働きがいを追求するためにも、自
発的な職業能力開発が必要であると述べられています。そのために、個々人の
キャリア形成を支援するための施策(キャリアコンサルティングなど)を充実
させる方向性が強く打ち出されています。
 いずれにせよ、現在の能力開発環境や問題点をマクロ的に理解するには非常
に多くの示唆を含んでいると言えます。
 上記の内容は、読者の皆様の身近で感じられていることではないでしょうか?

 余談ですが、私の身近でも本当に多くの企業において中途(即戦力)採用意
欲の高まりを感じることがあります。素朴な疑問ですが、即戦力を欲しいと言
うのもわかるのですが、誰が即戦力を育てるのでしょうか?

 話を戻しますとこのような環境の中で、人材開発を進める企業(人材開発を
仕掛ける)側においては、人材開発ドメイン(領域)という考え方が必要にな
ると思われます。人材開発ドメイン(領域)とは、会社として人材(人的資源)
をどう考え、会社として「どこまで」人材開発を行うかを決定することです。
 特に今後は、労働者個々人のキャリア形成への支援もなども含めて、人材開
発ドメイン(領域)をどう設定するか各企業ごとの対応が求められます。
 恐らく人材開発ドメイン(領域)は、普遍的なものではなく、各企業の成長
プロセスや取り巻く環境変化に応じて変化するものでしょう。

 ただ間違いなく言えるのは、人材開発ドメイン(領域)の設定に最も影響を
与えるのは、経営者や人材開発担当者の人材(人的資源)に対する考え方です。
そして、経営戦略を推進していく人材を調達、育成するのも、その考え方次第
によって大きく変化すると言えます。現在の雇用におけるミスマッチは、人材
開発競争時代へのスタートであるとも考えられます。経営に必要な人材を、調
達・定着できるかどうかが、経営を飛躍的に成長させる要因にもなれば、逆に
経営を悪循環させる要因にもなります。
 そう言う意味で考えると、「経営のための人材開発」というレベルではなく、
人材開発のレベルが経営を左右する(人材開発力=経営力)という真の意味で
の人材開発の時代になるとも考えられます。

 最後に、来るべき21世紀は、企業経営においてますます人材開発の重要性が
高まり、人材開発に高い期待と高い成果が要求される時代になるでしょう。高
い期待と高い成果を獲得するために、これからも読者の皆様と一緒に人材開発
について考えて行きたいと思います。今後もよろしくお願いいたしします。
 それでは、皆様よいお年を!


             (2000/12/25 人材開発メールニュース第119号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


Go to Back Number Index
Go to Top Page