Back Number

いま一度、「役割認識」
 最近の社員研修の傾向の一つとして、階層別研修より機能別・部門別研修の
重視、また役割認識など基本的内容の確認よりも実践的・具体的なスキルの獲
得に重点が置かれる傾向が強くなっています。

 これは、現在の人材開発を取り巻く環境、すなわち教育効果や費用対効果に
対する要請が強い環境の中では、研修後現場ですぐ使える実践的・具体的なス
キル開発に重点が置かれるのも当然の流れであると言えます。

 実際の研修の現場に置いても、階層別研修しかも管理者研修であれば定番と
言っても良かった「役割認識」のセッションが、最近では比較的簡単に行われ、
より実践的・具体的なスキル開発へウエイトが置かれているプログラムを拝見
するケースが増えているように思われます。
 また、研修を提案する場面においても「役割認識」の話をすると、「以前か
らやっている」「参加者は理解している」「基本的すぎる、実践的ではない」
などの否定的な意見を聞くことも増えているような気がします。

 一概には言えませんが、いま一度研修の中で「役割認識」を実施する場合に
考えていただきたいのは、どこまで掘り下げて検討しているかと言う点です。
例えば管理者研修において、ただ「管理者の役割とは?」というレベルで実施
すると、漠然としたり実践的では無いというのは当然の結果です。役割を具体
的に考えるためには、当たり前のことですが、「わが社において今後1〜3年
間に管理者のあなたに求められる役割は何ですか」というレベルで問いかけ、
役割を認識していただくことが必要になります。役割を認識する、考えるとい
ういうことは、組織の中における自らの存在意義を確立することです。

 特に、現在のように先行きが不透明であるという経営環境の中では、会社
(企業)レベルにおいても進むべき方向に対する確実な答えはなく、同業者間
においても、力を入れる分野がますます分散していくことが予想されます。
 自社がどの分野に力を入れようとしているのかを明らかにしたものが、経営
方針や経営目標です。経営方針や経営目標は、社会の中での自社の存在意義を
示したものであると言えます。経営方針や経営目標に対して、社員一人一人が
自らの存在意義を確立していかなければ、組織として向かうべき方向に対し、
推進力を発揮することはできません。また、企業レベルにおいて進むべき方向
に対して、絶対的な答えがない環境においては、個人レベルにおいても同じ事
が言えます。つまり自らの存在意義は会社、組織から与えられるものではなく、
環境の変化に応じて絶えず模索し続けていかなければならないものであると言
うことです。

 階層別研修に限ることではありませんが、これからの研修における「役割認
識」というセッションは、従来の一般的、全体的な役割というよりも、もっと
個々のレベルで考えることが必要になると言えます。真剣に存在意義の確立や
役割認識ができると自ずと課題が見え、自分自身に今必要な、より具体的・実
践的なスキルも明確になります。役割認識を明確にすることで、実践的・具体
的なスキル開発を目的とした研修もより活きてくるのではないでしょうか?


             (2000/09/11 人材開発メールニュース第104号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


Go to Back Number Index
Go to Top Page