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若年層キャリア開発研修の留意点
 少し前になりますが、「人材開発メールニュース−79号」でキャリア開発
を目的とした研修について書きました。そこでも触れましたが、主体的に自分
のキャリアを形成する人材を早期に育成するために、受講者の年齢層が若年化
している傾向が続いています。
 そこでも書きましたが、キャリア開発研修で一番難しいことは、キャリアの
方向性を確立する(ビジョンを決める、自分にとっての仕事の意味を確立する)
ことです。そのためにキャリアの棚卸が必要です。

 しかし、若年層(特に20代)の社員を対象にしたケースでは、職務経験の
少なさが響き、キャリアの棚卸だけでは、キャリアの方向性の確立が難しいと
いうのも事実です。勿論、自分のキャリア開発への問題意識が高い方はそれだ
けでも十分ですが、例えば、入社後、ローテションなど無く、一つの職場しか
経験していないような方にとっては、研修の場面でいきなりキャリア開発の方
向性を明確に、と言っても、自分が納得できる(コミットメントできる)解を
導き出すことは、難しいと言えます。

 それでは、自身のキャリア開発の方向性を考える場合に、キャリアの棚卸以
外の方法としてどんなものがあるのでしょうか?
 有効なひとつの方法として、他者の人生を研究させるという方法があります。
他者とは、歴史上の人物や有名人また自分の身近な人など何でも構いません
(実在の人物でなくても構いません。例えば、ドラマの主人公など)。要は、
自分が好きな、尊敬する、憧れる人物の人生を考えることで、自分が共感でき
る生き方を見つけることが一番重要です。ある人物を想定して、「あの時、こ
ういう行動をとった、こういう事を言った」など、できるだけ具体的な場面を
イメージして、その背景にある自分が共感できる生き方のキーワードを見つけ
ることが大事だと言えます。

 そして、その次に自分の目指す生き方の中で、仕事をどう位置づけるか、仕
事の価値観や仕事の方向性を考える、決めることが必要になります。キャリア
開発研修においては、どう生きるかと切り離し、あくまで仕事の分野に限定し
て、自分のキャリアや専門性をどのように形成するかを考えさせるものが多い
ようです。しかし、その中で出てくるキャリア開発の目標や計画に本人がコミッ
トメントしている内容が少ないと感じることが多いのも事実です。

 自分の共感できるキーワードを発見できれば、あとは順次、仕事やキャリア
開発に落とし込んでいくことが可能になります。「こういう生き方をしたい」
そのためには「人生の中で仕事はこうしたい」そのためには「将来及び当面は
このように自分のキャリアをこんな風に変化させたい」などより具体的に考え
ることが可能です。
 また余談ですが、実際の研修の場面においては、時間の制約などもあります
ので、上記のような方法を導入するためには、事前学習として運用を工夫する
ことも必要になります。

 若年層においては、キャリアの方向性を決める材料が少ないのは当然のこと
です。材料の少なさを補うためには、自分以外の人生や職務経験、またより大
きな視点での仕事の意味を考えることがキャリア開発に必要ではないでしょう
か。


             (2000/05/29 人材開発メールニュース第90号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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