Back Number キャリア開発とキャリアの棚卸 自らのキャリアや専門性の開発の方向性を考えるキャリア開発研修をお手伝 いさせていただくことが増えています。数年前までは、40代−50代を対象 としたライフプラン的なものが主流でしたが、年々若い年代への導入が進んで いるようです。その背景の一つには、自らのキャリア、専門性を主体的に開発 できる人材を早期に育成したいということが考えられます。 対象とした年齢層を問わず、キャリア開発研修で一番難しい点は、キャリア の方向性を確立する(ビジョンを決める、自分にとっての仕事の意味を確立す る)ということです。当たり前のことですが、目的を定めることができなけれ ば、目標や具体的な方法を組み立てることはできません。また、研修の場面で、 キャリアの方向性を単に書き出すことはできますが、自分自身が想いを込めた もの、コミットメントしたものを真剣に確立するためには、相当のキャリアの 棚卸、自己分析が必要になります。 キャリアの棚卸、自己分析には様々な方法がありますが、これまで担当して きた仕事を分解して考える方法も有効な(特にキャリアが長い方には)方法で す。 「仕事の分解」についてベーシックな方法として下記のやり方があります。 まず最初に自分が担当してきた代表的な業務をいくつか書き出します。それ を以下の5W1Hの観点から細かく分けて考えていくという方法です。 □WHAT(何を) 担当業務を、市場別、顧客別、商品別、部門別、地域別、対象別など様々な 観点から具体的に書き出す。例えば、営業を何年ではなく、○○商品の営業を 何年など。 □WHEN(いつ) 担当業務の経験期間を書き出す。WHATで書き出した単位で書き出すと尚 可。例えば、購買でもA商品の購買を○○年間、B製品の購買を○○年間など、 またはA社(地域)からの購買を○○年、B社(地域)からの購買を○○年間 など。 □WHERE(どこで) 担当業務を部門、ポジション(役職)、勤務地で担当したかを書き出す。例 えば、○○部で、海外で、出向先で、顧客先に応援派遣されて、など □WHO(誰が、誰と) 組織のメンバー(部下)を、取引先は、関係会社は業務で関連した人を書き 出す。併せて、社内外の人脈を整理する。○○関連について詳しい人材のネッ トワークができた、など □WHY(なぜ) 担当業務、担当部門の社内での目的(位置付け)、経営方針との関連性を書 き出す。例えば、新規事業として、テストケースとして、戦略業務として、な ど。 □HOW(いかにして) 業務を担当する中で自分なりに気をつけた点、創意工夫した点を書き出す。 このようなやり方で仕事を分解すると、1つの仕事でもたくさんのキーワー ドが出てきます。キャリアの棚卸しで大事なのは、たくさんのキーワードをで きるだけ洗い出すことです。洗い出したキーワードは以下の2つのことに使え ます。 一つは、これまでの仕事で自分なりに満足度が高いものを振り返り、その要 因となるキーワードを探り、キャリア開発の方向性を設定する材料にすること。 自分が好きなこと、やりがいを感じること、主体性を発揮できることを考える 材料にすること。例えば、たくさんのメンバーと仕事をすることに好きだ、新 しい仕事をすることが好きだ、など。 もうひとつは、キャリア開発の目的が定まり、目標、計画を立てる場合に、 自分の強みを強化するのか、弱みを補強するのかを考える材料とすることです。 研修ということに限らず、自分のキャリアをどう構築するのかは、これから 全てのビジネスパーソンに必要になると言えます。自分のキャリアを構築する 第一歩として、定期的なキャリアの棚卸を何らかの方法で実施することも大事 だと言えます。 (2000/03/06 人材開発メールニュース第79号掲載) WISEPROJECT:吉次 潤 Go to Back Number Index Go to Top Page |