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マニュアルとサービス(3)
 今回も少し、マニュアルに関する話をしたいと思います。
前回マニュアルの話を少ししたところ、マニュアルは、「不要」とか「いや必
要」とかいう意見が寄せられましたが、特に私はマニュアルの要・不要を決め
つけるつもりはありません。
 結論から言えば、マニュアルが掲載する内容が「情報」か「知識・知恵」か
という事が、今後はより重要になるかと考えます。

 情報と知識・知恵の違いは、特に最近では、「形式知」、「暗黙知」という
ような呼ばれ方をしています。情報は、データなどよって構成されたものであ
り、記号化、数値化できるものです。一方知識は、情報をもとに理解すること、
認識することであり、知恵は知識を現実の場面に適応する能力や成功事例集と
いうような区別をされることが多いと言えます。一般的に、情報は記号化、数
値化することで、簡単に流通ができますが、知識、知恵は基本的には人間の内
部にあるもので、流通しにくいものであると言われています。本来、個人の頭
の中にある知識をどう組織、企業の資産として蓄積し、活用するかというのが、
いま注目を集めているナレッジマネジメントです。
 
 話を戻しますと、マニュアルに掲載されているコンテンツは、従来情報が中
心でした。しかし、今後、サービス業は(サービス業に限定されることではあ
りませんが)様々な期待を持つ顧客に対応するために、様々な知識を提供して
いかなければ顧客の満足を得ることはできないと考えられます。マニュアルに
掲載するコンテンツもただ単に情報を掲載するだけでなく、知識、知恵が掲載
される必要があると言えます。少し具体的に言えば、顧客との対応の中で「こ
う考え、このように対応した」という「コト」レベルの知識がマニュアルに記
載され、さらにそれを読んだ人が、また自ら創意工夫をして、さらに顧客に満
足していただくコトを考え、行動し、そのコトが次々に蓄積される仕組みが必
要になると考えます。

 つまり、マニュアルは与えられる情報ではなく、利用者が自ら創意工夫を生
み出すまたは考える材料、ツールになるべきものです。マニュアルは、誰がつ
くるべきかという議論もよく耳にしますが、マニュアルは現場に密着したもの
でなければなりません。そのためには一方的な情報の伝達よりも、従業員一人
一人が考え出した創意工夫やコトを広く吸い上げ、フィードバックするツール
として、最前線で顧客に対応するメンバー全員で作り上げるものであると言え
ます。


             (2000/02/21 人材開発メールニュース第77号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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