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マニュアルとサービス
 先日、ある企業からマニュアルについて相談を受けました。その企業は店舗
展開の促進とともにマニュアルの整備に非常に力を入れていました。しかしそ
の企業のトップ、店舗運営、人事担当部門は、店舗展開とともに、マニュアル
整備を進めているが、サービスが低下しているということに非常に危機感を募
らせていました。
 そこで、現在あるマニュアルについての問題点についての相談を受けたので
すが、今回はマニュアルとサービスについて考えていきたいと思います。

 サービスは本来、サービスを求める人に期待水準があり、その期待水準を超
える満足を提供できるかどうかで評価されるものです。サービスを求める人が
100人いれば、100通りの期待水準が存在しています。マニュアルを遵守
した対応は、サービスの均質化が図られる一方、サービス提供者の個性や創意・
工夫、また創造性を奪い、結果として個別化する期待水準に対応した柔軟なサー
ビスが提供できないことが起きているのではないでしょうか。
 その理由の一つとして、マニュアルは最低限のルールであるにもかかわらず、
現場の運用場面において、最高のルールになっていることがあげられます。つ
まりこれは、マニュアルをどう位置づけるかという問題です。マニュアルと共
に、サービスの「やり方」は教育されていますが、サービスの「あり方」(そ
の企業独自の、その企業が生き残っていくための)が教育されている企業はま
だ少ないように感じます。
 現在、一部の企業で、マニュアルを少なくしたり、マニュアルを無くす試み
が行われているのも、顧客に応じた柔軟なサービスを提供したいという思いが
あるのではないでしょうか。

 サービスの成功例として取り上げられる東京ディズニーランド(以下TDL)
も、マニュアルの方法論よりも、サービスを行うための行動規範(基準)の共
有、実践に重点がおかれているのは、有名な話です。

●SCSEとは、
 □Safety:安全性
 □Courtesy:礼儀正しさ
 □Show:ショー
 □Efficiency:効率
 TDLでは、ハード、ソフト全てのサービスがこの基準に基づいて提供され
ています。マニュアルそのものもSCSEの考え方で構成され、またマニュア
ル以外の対応についてもSCSEの順番で考え、対応することが決められてい
ます。

 TDLの素晴らしさは、この考え方を徹底している点にあります。行動規範
(基準)の徹底がサービスの生命線であると考え、社員、キャスト全てのメン
バーに考え方が共有されるよう努力を繰り返しているという点です。
 バブル期以降、様々なテーマパークが作られ、TDLに習えとばかりに、T
DLのSCSEと同様のサービス規範(基準)を作る試みが繰り返されたが、
結果TDLを超えるテーマパークが今現在出現していないのは、様々な理由が
考えられますが、サービスの質の違いという点も一因としてあげることができ
ます。
 質の高いサービスを提供している企業に共通していることは、サービス提供
の目標レベルが高い、トップから現場まで一貫してサービス目標、方針が共有
化されている、また目標を真剣にかつ徹底的に追求する風土がある、という点
です。一方、目標は上げられながらも、真剣ではない、徹底していないという
企業が多く存在するのも事実です。

 マニュアル、サービスをどうするかということよりもマニュアル、サービス
は、どうあるべきかと絶えず、真剣に考えることがより重要ではないでしょう
か。


             (2000/01/31 人材開発メールニュース第74号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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