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創造性開発とマネジメント環境
 「社員の創造性を高めたいのだが?」と質問されることがあります。質問さ
れる方は、社員の創造性を開発するために何かいい方法はないかという意味で
質問されているケースがほとんどです。勿論、創造的なスキル開発を目的とし
た教育プログラムは、様々な形で開発されています。しかし、創造性開発が上
手く進んでいるという声が少ないの何故でしょうか?

 創造性という言葉から、イメージを広げていくと、特に先程の質問例のよう
に経営幹部の方が社員の創造性を高めたいと言われる場合には、他人と違った
ものを生み出す「独創性」、自ら進んで生み出す「自発性」などのニュアンス
を含んで使われるケースが多いのではないでしょうか。さらにイメージを広げ
ていくと、その根幹にあるものは、個性,価値観ではないでしょうか。
 個性、価値観と言うものは、既に存在するものです。組織として創造性を高
めていくためには、個々人に対し創造性を発揮するスキル開発を行うよりも、
メンバーの持つ多様な個性、価値観を引き出す(組織として受け入れる)こと
がより重要であると言えます。
 従来、多くの企業で、会社・組織の目標を効率的に達成するためにメンバー
をどう管理するかということに関心が高かったと言えます。しかし、創造的な
活動、自発的な活動を求めるには、逆にメンバーの個性を尊重しながら、組織
の中で彼らの持つ欲求を満たしていくスタイルの転換が求められます。
 創造性を高めていくためには、環境が重要です。どんなに個人を対象に創造
性を高めるためのスキル開発を行っても、そのアイデアやプランを具現化する
環境が無ければ、創造性は育つことは無いと言えます。逆に言えば、個性・価
値観を尊重する環境があって初めて、個々人の創造性スキル開発が有効になる
と言えます。

 個性・価値観を尊重する組織作りを担うのはライン管理者です。ライン管理
者には、組織・企業の目標達成を優先してメンバーをどう管理するかだけでな
く、個々のメンバーが持つ多様な個性・欲求を組織の目指す方向に統合してい
く役割が求められます。そのためライン管理者は、組織目標の達成のためにメ
ンバーの行動を調整するスタイル(=マネジャースタイル)だけでなく、メン
バーの個性・価値観を尊重しつつメンバーの持つ能力を最大限に引き出し、組
織の進む方向へ適合、発展させて行くスタイル(リーダースタイル)への転換
が求められています。
 社員の創造性を高めたいという方には、個々人の創造性スキル開発よりも、
下記の「マネジャーとリーダーの違い」をヒントにして組織のマネジメントス
タイルをまず注目していただきたい。

 <マネジャーとリーダーの違い>(W.ベニス「リーダーになる」より抜粋)
 □マネージャーは管理者であるが、リーダーは変革者である。
 □マネージャーは複製されたコピーあるが、リーダーは個性のあるオリジナ
ルである。
 □マネージャーはシステムと機構に、リーダーは人材に焦点をあてる。
 □マネージャーは管理しようとするが、リーダーは信頼感を高めようとする。
 □マネージャーは近視眼的であるが、リーダーは長期的視野に立つことを知っ
ている。
 □マネージャーは現状を受け入れ、リーダーは挑戦する。
 □マネージャーは正しい方法で行い、リーダーは正しいことを行う。


             (1999/12/13 人材開発メールニュース第68号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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