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OJTの課題と今後の進め方(2)
 OJTには、体系的(構造的)OJTと非体系的(非構造的)OJTがあり
ます。
 体系的OJTとは、システムとしてのOJTであり、インストラクターやO
JTリーダーと呼ばれる指導者のもとで、あらかじめ体系的に計画された知識
やスキルを、職務を実践しながら学ぶことです。
 もう一つの非体系的OJTは、その名の通り、特に体系だてられたものでは
なく、部下側から見れば、上司を見る(観察する)ことから学ぶことであり、
俗に「目で盗む」と言われるものです。また組織側から見れば、業務を進めて
いく上で困っている人がいれば、直属の上司に限らず、気づいた人がアドバイ
スを行うというものです。具体的な仕事上のアドバイスも当然ですが、「声を
かける」と言った類のものも含まれます。

 非体系的OJTを支えるのは、社内におけるコミュニケーションであると言
えます。従来日本では、QC,TQCに代表されるような小集団活動など活発
に行われることで、社内におけるコミュニケーション環境は、非常に高いレベ
ルにあったように思われます。
 しかし、技術革新や情報化が進む中で、人を通じて行われるコミュニケーショ
ンの機会が減りつつあるのではないでしょうか。業績追求型の人事制度やコン
ピテンシーモデルの追求など、個人に焦点が当てられることが多くなっていま
す。組織的な人材開発から個人の能力開発中心へ、その流れを否定するわけで
はありませんが、逆にOJTに代表されるような組織的な人材開発の機会が減っ
ているのではないでしょうか。このような状況の中で、社内独自の技術・技能
など、企業の競争力の源泉とも言えるノウハウの伝承に支障が見られるケース
も増えつつあります。
 私自身、いろいろな企業を訪問させていただいて感じるのは、業績がいい会
社に共通することは、社内がにぎやかな事です。日常の業務連絡には、様々な
情報機器の導入が充実している会社でも、自由に色々な会話が飛び交っている
雰囲気が伝わる会社は、業績の良い会社に多いように思えます。恐らく組織全
体が様々な情報を共有することで、新たな価値を身につけているのではないで
しょうか。

 少しOJTの話から外れてしまいましたが、OJTも従来は教育、”教える”
ということばかりが注目されていました。むしろこれからのOJTでは、様々
な情報を与えることで、自ら”気づく”という機会をどれだけ提供できるかと
いうことが重要になるような気がします。一人一人が業務を進めて行く上で、
計画通りに進まないことや習熟がうまく行かないときに、組織の中で気づいた
誰かが、必要な情報を送る、そのような組織が必要になると言えます。
 前述の通り、必要なのは情報だけとは限りません。励ましの言葉をかけるの
も重要な事です。また、個人が困っていることを、誰よりも先に気づいていか
なければならないのは、管理者の方々です。これからの管理者の方には、部下
の支援者としてのリーダーであることが要求されます。したがって管理者には、
エンパワーメント、コーチング(指導)、メンタリング(助言)のスキルが重
視されます。
 また会社としては、より積極的なコミニュケーションが生み出されるような
組織作りを行うことも重要です。人材開発スタッフの方々は、様々な部門の業
績支援スタッフとして部門間をまたがるコミュニケーションの推進役となって
いくことも要求されると言えます。特にOJTを支援する立場としては、教育
を通じてコミュニケーションの活性化を図る取り組みが必要になってくると言
えます。


             (1999/08/31 人材開発メールニュース第53号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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