Back Number コア・コンピタンスとコンピテンシー 今回は、人材開発の場面で最近よく使われる2つの言葉、コア・コンピタン スとコンピテンシーについて整理していきます。 コア・コンピタンスとコンピテンシーは、組織的なものか個人的なものかと いう点で違いがあります。コア・コンピタンスは、「顧客に対して他社のまね のできないもの、自社ならではの価値を提供できるもの、自社の競争上の強み」 つまり企業の力を意味していています。 もう一言付け加えると、「顧客から見た企業の力」ということが、非常に重 要になります。私のお手伝いする企業でも、売上の減少や、収益力の低下で悩 み、現状を打破するための相談を受けるケースが多いのですが、その場合、大 抵のところが、新しい事を始めたいと言われます。新しい事への挑戦も勿論良 いのですが、今一度考えていただきたいのは、既存のお客様がなぜ自社の商品 を買ったり、サービスを利用していただいているかと言うことです。「買われ る(利用される)ことの意味」を整理することが必要です。これはすなわち顧 客から見た企業の価値であり、この価値と整合性が取れない新たな動きは、成 功する確率やスピードが低く、また成功しても継続する上での効率が悪くなる と言えます。 市場が停滞する中で、企業の方が必要以上に自信を失い、自社の強みを考え る機会が減っているような気がします。市場が停滞する今こそ、顧客の視点か ら、自社の強みを再確認して、強みを活かす行動が必要なのではないでしょう か。 話を元に戻し、コア・コンピタンスが組織、企業の力であるのに対し、コン ピテンシーは個人の力であると言えます。コンピテンシーは、学者やコンサル ティング機関によって様々な定義がされていますが、一般的には「高業績達成 者が保有している能力=業績達成能力」と言われています。すなわち、成果を 生み出すために発揮されている能力のことを意味しています。 発揮されているという部分で、従来使われていた職務遂行能力との違いがあ ります。職能資格人事制度での職能(職務遂行能力)は、発揮よりも保有して いるかが問われます。 またコンピテンシーは、行動=高業績をもたらした行動を中心とした分析で あると言えます。高業績をもたらした要因としてどのような行動を選択し、実 際に行動にどのように結びつけたか、という点が注目されます。言い換えれば、 広義の行動力であると言えます。つまり、自社の個別の成功要因を分析し、一 般化を図り、それに基づいて採用、配置、教育、評価などを行おうとする考え 方です。 行動に焦点をあて成功要因を分析する上で大切なのは、自分(自社の人間) がどのような仕事をしたかではなく、この場合も「顧客に求められている行動」 や「顧客に期待されている行動」は何かという視点から分析することが必要で す。 コンピテンシーの問題点は、成果や業績に結びつく高業績達成者の行動を重 視するために、非常に個別の職務と密着したものとなり、職務としての応用は 可能でも組織として応用が難しいと言えます。また、コンピテンシーの分析は 実在の業績達成能力の分析であるため、あくまでも現在、過去のものであると 言えます。今後は将来必要とされる業績達成への能力の予測すること、企業、 組織の成長と共に、どのような業績達成力が求められるかを考えていく必要が あります。 コア・コンピタンス、コンピテンシーいずれもまだ新しい概念であり、現在 は発展途上の理論であると言えます。コンピテンシーで指摘した問題点、個別 職務から全体組織への適用、現在分析中心から将来予測の加味ということは、 すなわちコア・コンピタンスとコンピテンシーの融合を図ることでもあります。 人材開発担当部門においては、コア・コンピタンスとコンピテンシーの連結が 今後の大きなテーマになると考えられます。 (1999/06/21 人材開発メールニュース第44号掲載) WISEPROJECT:吉次 潤 Go to Back Number Index Go to Top Page |