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教育研修技法(3)
 前回に引き続き、基本的な教育技法について整理していきます。

 9.センシビティ・トレーニング(ST=sensitivity training) 
  ラボラトリー・トレーニング(実験室訓練)の代表的な方法です。受講者
を日常性から隔離した特殊な場所で、慣習や行動基準がない不安定な状況を設
定し、その中で自己や他人や集団について討論などを行い、集団の相互作用を
通じて、他人やグループに対する自分の態度を変容しようとするものです。直
接的体験技法であるため専門の教育機関や講師による指導が必要になります。

 10.交流分析(TA=transactional analysis)
  アメリカの心理学者エリック・バーンが考えた心理療法ですが、教育研修
では対人関係向上の技法の意味で使われています。人間の持つ3つの自我状態、
P(ペアレント)、A(アダルト)、C(チャイルド)から対人交流の仕方を
分析し、自分と相手の関係を理解しようとするものです。ヒューマン・スキル
の開発を目的とした研修で、活用されています。

 11.教育ゲーム、ゲームトレーニング
  研修の場にゲームによって、シュミレーション的な状況を作りだし疑似体
験をさせることを通して、対応のしかたなどを学ぶ技法で、体験学習技法の1つ
です。ゲームには、対象に応じてコミュニケーションゲーム、協力ゲーム、組
織ゲームなど様々なものがあり、対人関係能力、問題解決能力などの向上を目
的に使用されます。目的にあったゲームの選定と十分な疑似体験のふりかえり
が必要です。受講者の参画意識を高めるためにも有効な方法です。

 12.組織開発(OD=organization development)
  職場や部門を単位として、職場の管理者が主体性を持って、グループによ
る体験学習を通じて、職場全体の問題解決能力を高め、組織風土の改革を目指
す方法です。
 通常は以下のようなステップで実施されます。(1)問題の決定、(2)組
織診断と分析、(3)メンバーによる問題に対する共通認識の確立、(4)変
革計画(理想モデル)の設定、(5)変革計画の実施、(6)評価とフィード
バック。

 13.マネジリアル・グリッド
  心理学者ブレイクと数学者ムートンによって開発されたもので、管理者研
修や組織づくりの技法として活用されています。受講者に、業績に対する関心
の高低と人間(部下)に対する関心の高低との組み合わせによる5つのタイプ
に分けた管理スタイルを学ばせ、現在の自分のスタイルを分析し、あるべき管
理者像への変容を促すものです。
(1)管理者の意識変革、(2)チームワークの改善、(3)部門間活動の改
善、(4)企業戦略モデルの設定、(5)戦略の計画化を実施、(6)定着化、
と段階を追って組織づくりを進めて行く方法です。現在でもよく利用される方
法ですし、理論は、リーダーシップ理論のSL理論などさまざまな形で発展展
開されています。

 3回にわたり、代表的な研修技法について説明してきました。ここに紹介さ
せていただいたものが、全てではありませんが、現在使われている様々な研修
技法のベースになっているものを主に紹介したつもりです。
 社員教育を企画・運営される方々は、その研修のねらいや対象者を踏まえて、
適切な研修技法を選択する必要があります。そのためには、数多くの技法の方
法や効果、実施にあたり注意すべき点などを、理解する必要があります。しか
し、その一方で技法にこだわりすぎることにも注意しなければなりません。研
修技法は、研修目的を達成するための手段です。必要に応じて研修技法の型を
崩す、また他の研修技法を組み合わせるなど柔軟な運用が求められます。


             (1999/06/07 人材開発メールニュース第42号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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