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教育研修技法(2)
 前回に引き続き、基本的な教育技法について整理していきます。

 6.ケース・メソッド(事例研究法)
  職場などで現実に起きそうな問題を事例として、研修の場で研究し、実戦
に役立つ原理原則を修得させ、意思決定能力を高めようとするものです。

 代表的な方法として以下の方法があります。
 1)ケーススタディ
  事例を個人やグループで討議し、解決策を作り上げる過程を体験させるこ
とで、実務に役立つ判断力や問題解決能力を習得させる方法です。人材開発に
実務への連動が期待される中で、ケーススタディは重要度を増しています。ケー
スの出来が研修の出来を左右すると言っても過言ではありません。またケース
を使った目的が十分に受講者に理解されるために、フィードバックに充分時間
をとることが必要です。
  また、最近ではMBAをはじめ、ハーバード形式と言われるような現実の
企業活動等をモデル(事例)として使用し、当事者の立場に立って問題解決の
プロセスを重視する方法が増えています。

 2)ビジネス・ゲーム
  企業の活動をモデル化して、経営や管理の演習を行うものです。受講者を
競争状態にある数社に分け、各グループが机上で様々な経営意思決定を行い、
期ごとの業績について競います。経営の仕組みの理解や、モデルに一定の数字
的関係をもたせているので、計数能力の習得もできます。特に最近では、パソ
コンを利用して行う、ビジネス・ゲームソフトも次々に開発されています。

 3)イン・バスケット方式
  イン・トレイ方式とも言われます。受講者にある役割(課長など)を想定
させた上で、未決の書類を次々に与え、短時間のうちに数多くの決済処理をさ
せ、その結果について検討させる方法です。日常の意思決定の練習であり、ア
セスメント研修の中で使われることが多くなっています。

 4)インシデントプロセス
  受講者に事例として簡単な出来事(インシデント)を与え、必要な情報は
受講者が講師に質問して、情報を入手し、問題を分析し、対策を検討する方法
です。受講者が質問しなかった項目に関しては、情報は提供されません。日常
業務においても、意思決定を行う場合は、情報は整理されていることはまれで、
むしろ情報は断片的なものが多いため、情報収集能力の向上や問題分析力の向
上に効果があります。

 5)ケプナー・トリゴー法
  社会学者のケプナーとトリゴーによって開発されたもので、優れた経営者・
管理者に共通する意思決定のプロセスを体系化し、トレーニングプログラム化
したものです。問題究明、意思決定分析、最適案の選択、リスクへの対応の4つ
の思考手順で構成されています。

 7.ブレーン・ストーミング(以下BS)
  10人前後の人が、特定のテーマについて自由にアイデアを出し合い、相
互に影響し、集団啓発によって優れた発想を生み出そうとする創造性開発技法
です。BSには次の4つのルールがあります。(1)他の意見を批判しない
(2)理屈にとらわれない、自由な意見を歓迎する(3)アイデアの数を重視
する(4)他人の意見に便乗したアイデアを歓迎する。BSは、日常の会議や
仕事に適用されていますが、意思決定のための会議には向きません。
  また、類似の技法として、抽象的なものを課題(BSは具体的な課題を対
象とする)として、BSを行う「ゴードン法」などがあります。

 8.フィードバック法
  第三者やメンバーが匿名で、メンバー一人一人について判定や評価をし、
それを本人に提示することで、本人は他者の目を通じて自己を知り、自己革新
を図ろうとするものです。また受講者を2グループに分け、一方を実験者とし
て討議などグループ活動を行わせ、もう一方がそのグループ活動を観察して、
フィードバックするものをフィッシュボール(金魚鉢)方式と呼んでいます。
  また現在ではフィードバックを応用することで、研修だけでなく、アセス
メントや考課の場面で使われることが増えています。その場合には、多面観察、
360度フィードバックと呼ばれています。


             (1999/05/31 人材開発メールニュース第41号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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