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教育研修技法(1)
 毎年様々な教育機関から新たな研修プログラムや研修技法の紹介が行われて
います。しかし、新たなものを正しく理解するためには従来の方法の善し悪し
や、考え方の背景を理解していなければ、ただ「新しい」という言葉や情報に
振り回されるだけになりかねません。そこで、今回から数回にわたり、基本的
な教育技法について整理していきます。

 1. 講義法
  講師があるテーマに基づき、知識や考え方を一方的に伝達する方法です。
同時に多数の人を相手にできる、短時間で行える、手軽にできるという長所が
ありますが、受講者が受身になり学習効果が上がりにくい、行動と結びつきに
くい、受講者間の理解度がばらつきやすい、講師により効果が影響されるなど
の短所が存在します。

 2. プログラム学習法
  受講者一人一人の能力開発の進捗状況に応じて、理解度を確認しながらス
テップアップしていくように工夫された学習方式です。プログラム化された教
材に基づき進めるもので、講師を必要とせず自習に向いています。最近では、
教材のマルチメディア化の進展や、インターネットやイントラネットと組み合
わせたウエブ・ベースド・トレーニング(Web Based Training:WBT)の導入な
ど、今後の企業内教育の新たな流れを形成するものとして期待されています。
教材の質と費用対効果の把握が重要になります。

 3. 課題討議法
  複数のメンバーによる多角的な視点から、あるテーマを討議によって掘り
下げ、理解を深めながら解決につなげる方法です。メンバー中心で参画度が高
い、結果が受け入れやすいなどの長所と、時間がかかる、体系的に学びにくい、
メンバーのレベルによって結果が違うなどの短所があります。

 代表的な方法として以下の方法があります。
 1) バズ・セッション
  5人程度の小グループに分け同時並行で討議した後で、各グループの結論
を発表しあって全員で討議をする方法。相当数の人数でも、参画度を高めた状
態で運営することが可能です。

 2) パネル討議
  テーマについて、知識や経験を持っている人など数名が代表として全員の
前で自由討議し、ある程度進んだ段階で、他のメンバーが質問したり、意見を
述べたりする形で討議に参加する方法です。

 3)フォーラム
  元々は公開討論会のことですが、教育研修場面においては、講義、討議、
討論など参加者に資料や調査結果など十分な情報を提供した後で、全体討議を
します。参加者全員に十分な情報を与え、興味、関心を興味を高め、参加者全
員のテーマに対する働きかけを強めようとするものです。

 4)シンポジウム
  テーマについて、異なる意見を持つ代表者が講義を行い、その後で参加者
が質問したり、意見を述べたりして全体討議に移行する方法です。パネル討議
と違って、パネラー同士は討論をしません。

 4. ロールプレイング(役割演技法)
 「営業マン対顧客」など現実に近い状況の実験的場面を設定し、参加者にい
ずれかの役割を付与し演技させることによって、その役割の理解や、状況に対
する行動力、コミュニケーション能力などを開発する方法です。ロールプレイ
ング場面をVTRで撮影し、VTRを見ながら全体討議を行うことで、参加者
全体の気づきを促進し、態度変容に結びつける方法が行われています。

 5. プロジェクト法(課題法)
  職場で抱えている現実の問題にできる限り近い実際的な課題を割り当て、
一定期間調査・研究を行わせた上で結論を出させる技法です。課題解決のため
に管理サイクル(Plan−Do−See)を実際に体験させることで、実践
的な問題解決力、情報収集・分析力、創造力などを身につけさせる方法です。
動機づけがしやすい、主体的に学びやすい、実際の職場で応用しやすいなどの
長所があります。反面、結論を得るまでに時間がかかる、参加者や講師のレベ
ルによって影響されやすいという短所があります。


             (1999/05/17 人材開発メールニュース第39号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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