Back Number 研修の進め方〜プロトタイプ(成功事例)をつくり、展開する方法 集合研修には、様々な進め方があるが、昨年から今年にかけて取り組んだ研修の 中で、有効だった新しい研修の進め方について紹介したい。 A社は、毎年期末に来期の会社方針を発表し、それに基づき各課レベルで業務計 画書を作成していた。しかし、各課レベルで作成される計画書は、目標や計画が具 体的でなく、むしろスローガンのような内容であったり、毎年同じ課題が出される など、計画書の内容に関して経営トップは非常に不満を持ち、管理者の目標設定お よび計画書作成のレベルアップを図るための研修の依頼を受けた。 そこで、ただ単に方針の展開から職場の目標づくりを研修するのではなく、新た な試みとして実際にひとつの課の計画書作成に立ち会い、指導し、成功事例(プロ トタイプ)を作りだし、成功事例を社内に展開していくやり方を実施した。 研修の概要は下記の通りである。 1.管理者全員(マネージャー、チーフ)に対するセミナー。 2.モデルチームを対象とした、1ヶ月間(毎週1回)の研修。 3.管理者全員による合宿での計画書作成。 ○管理者(マネージャー、チーフ)全員に対するセミナー 3時間のセミナーとして実施。 現在の一般的な環境変化と管理者に期待される役割の変化に関する講義を当社で担 当、社長から来期の方針の発表される。 ○モデルチームを対象とした研修−年間計画表の作成 社内から1つの課を選抜し、実際に1ヶ月間研修の中で、来期の業務計画書を作 成に取り組む。毎週1回約3時間の研修で、当社が司会進行役となり、会社方針と 連動した来期の業務計画書づくりを指導を行った。毎回課題を出し、次の研修まで に課題を作成し、研修の中で課題のチェックと仕上げを繰り返し、最終的なアウト プットとして年間計画書を作成を行った。 選抜チーム以外の管理者についても、研修の見学を自由にできるようにし、さら に研修内容をすべてVTRに収録し、いつでも見れる環境づくりを行い、自主的な 参加を促した。 ○管理者全員参加での研修(会議)の実施 1泊2日の合宿で、各チームの年間計画表の作成を行う。 モデルチームおよび研修事務局がアドバイザーとなり、各チームの年間計画表を作 成した。 この研修で、モデルチームは周りから見られている状況の中で、課題に一生懸命 に取り組み、非常に具体的な業務計画書が完成した。モデルチーム以外の管理者は、 研修見学およびVTR閲覧を自主参加にしたため、最後の宿泊による計画書作成で、 モデルチームと同じレベルで考え、検討してきた管理者がいるチームは、結果とし て早く計画書が作成でき、なおかつ作成した計画書の内容のレベルが高いという傾 向が顕著に見られた。実は、この研修は昨年末に実施したものだが、実際に年間計 画書に基づいた1年を終えて、計画書の内容が具体的であったチームほど、業務の 遂行率が高く、また来期の課題および計画についても順調に仕上がっている。 このような形で研修を進めていくポイントとして以下のことが挙げられる。 ・選抜するチームは、現在最も活躍している課であること。 ・通常の研修よりも事務局と講師の情報交換がより緊密であること ・講師の対応が柔軟であること。(研修時間外でも、対応できる講師であること。) 特に一番最初の、チームの選定は重要である。社内で影響を与えるためには、で きているチームのノウハウを他のチームに浸透させるやり方が最も効果的である。 研修だけに限ることではないが、自社の独自性を持ちつつ、効率的に組織の底上 げを図るためには、学ぶべき事例は他社ではなく、自社の中に存在する。自社の最 も良い部分を、限定した一部の人や組織だけが持つのではなく会社の共有財産とし て活用できる環境づくりを行うことが必要であると考えられる。 (1998/12/14 人材開発メールニュース第18号掲載) WISEPROJECT:吉次 潤 Go to Back Number Index Go to Top Page |