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教育効果の測定について(1)
 企業の人材開発担当者にとって、最も関心が高いことは教育効果をどこで計るか
ということであろう。そこで、今回と次回は、教育効果の測定について整理してい
きたい。

 教育の効果を考える場合、2つの視点に分けてみると整理しやすくなる。一つは、
研修単位の視点であり、もう一つは、人材開発単位の視点である。
 研修単位の視点とは、研修ごとに受講者が研修内容をどれだけ身につけたか、習
得したかということであり、人材開発の視点とは、人材開発施策を実施した結果、
組織全体がどのように変わったかということである。「教育効果・研修効果」 と
いう言葉は、人によって様々な意味で使われていることが多い。人材開発を企画・
運営する場面で、自分と関係者が同じ意味で言葉(教育効果・研修効果)を使って
いるかは、十分に留意したい点である。

 個別の視点である研修単位の視点は、研修の実施状況、受講者の習得度、職場で
の活用状況の3つの視点がある。
 研修の実施状況とは、研修が計画した通りに行われているか、予定した回数・時
間を縮小してないか、正当な理由なく内容を変更してないかなど、実施状況が良好
であるかそうでないかによって、効果が違ってくるということである。
 受講者の習得度とは、研修内容がどの程度、身に付いたかということである。あ
る意味で研修効果の測定・評価の中心になるものである。
 職場での活用状況とは、研修により身につけたものが、職場でどのように活かさ
れているかということである。職場での活用状況をどのように把握し、どのように
評価していくかということは、研修の極めて重要な部分である。

 研修単位の評価は、以下のような評価軸と項目が挙げられる。
 1.測定対象
   ○経営・組織への影響 ・業績がどの程度上がったか
   ○受講者本人への影響 ・行動がどれだけ変わったか
 2.目的対応
   ○研修内容のそのものの効果 ・学んだことが役立っているか
   ○付随する(周辺的な)効果 ・他者との交流
 3.影響範囲
   ○直接効果 ・受講者本人への効果と周囲への影響
   ○波及効果 ・該当能力の強化が他の能力へ及ぼす効果
 4.時間経過
   ○研修直後の変化  ・促成能力と熟成能力
   ○一定期間後の変化 ・習得状況と持続性
 5.測定基準
   ○絶対効果  ・費用対効果
   ○相対的効果 ・手段の代替性(研修ではなく他の方法でできないか)

 研修単位の測定は、絶対的な方法が確立されているわけではなく、むしろ企業の
経営戦略(方針)・人材開発戦略(方針)により、どの評価軸また評価項目を中心
に行うかを決定していかなくてはならない。
 また個別の研修評価・測定も絶対的なものがあるわけではなく、現在の組織に応
じた研修効果の測定システム作りを行うことが、人材開発を企画・運営していくも
のの永遠の課題であると言えるであろう。

 次回は、人材開発の視点から、再度教育効果の測定についてまとめます。

 ◆参考文献 平松陽一著『確実に人材を育てる企業内研修の進め方』かんき出版


             (1998/10/12 人材開発メールニュース第9号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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