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経営戦略と人材開発(1)
 グローバル化とメガコンペティションが進む中、経営環境は、ますます不確実・
不透明になり、将来に対する予測は非常に難しくなっている。企業においては、自
らが進むべき方向を新たに創造し、実現していく経営戦略の重要性がますます高く
なってきている。
 また現在、多くの市場は成熟期を迎え、規模が小さく、ライフサイクルが短い市
場が当たり前となっている。こうした市場で競争優位性を獲得するためには、戦略
の独自性、高度な専門性や技術による他社との差別化、顧客対応のスピードが不可
欠となる。企画開発力、計画力といったソフト力や短期に事業をつくりあげるスピー
ドや柔軟性と言った要素が、競争優位を決定する要因をなってきている。換言すれ
ば、知恵の生産性が競争の決め手となってきている。

 一方、人材開発は経営戦略とのリンクの必要性が唱えられながらも、実際は、経
営戦略とは関係なく、独自の領域を形成し、教科書的に進められていた傾向がある。
 ・業務遂行に関する基本的な技術、知識はOJTを中心に現場での教育にゆだね、
  年次、職位によって横断的に実施される階層別研修により、画一的,均質的な
人材育成を繰り返し行う。
 ・自社の戦略とのリンクよりも、同業他社の事例や人材開発システムに強い関心
を示す。
 ・トップも経営方針などでは「人材育成の重要性」を揚げながら、実際にはどの
ようなプログラムが実施され、
  どのようなシステムが運用されているかには関心が無い。
このような状況は、多かれ少なかれどの企業にも見受けられる傾向である。
 右肩上がりの成長が前提の時代においては、画一的,均質的な人材育成により、
会社人間を大量に養成することが、市場の拡大につながっていた。
 しかし、知恵の生産性が企業の競争力を決める,創造性が重視される時代におい
ては、教科書的,画一的,均質的,成り行き,場当たり的な人材育成では企業の存続
そのものが危うくなることも考えられる。

 戦略は、「プランとしての戦略の質」と「戦略を実行する人」によって、はじめ
て実現することができる。どんなに素晴らしい戦略を策定しても、それを実行でき
る人材がいなければ機能することない。「新規事業をしたいが、その人材がいない」
という声を聞くことは多い。
 また実行場面での人材もそうだが、戦略を策定するのもヒト(=人材)である。
策定するヒト(=人材)のレベルによって、戦略のレベルが決まると言っても過言
ではない。間違いなく、人材開発の如何が企業の命運を握る時代がやってきている。

 これからの人材開発は経営戦略を最も効果的に展開するにはどのような人材が必
要かという視点から考えられなければならない。そのため、人材開発においても、
明確なビジョンと戦略が求められる。
 「経営戦略を推進する人づくり=人材開発」、経営戦略と人材開発のリンクは、
ますますに重要になると言える。   


             (1998/09/14 人材開発メールニュース第5号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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